パパの行動心理学

 ある日のニュース番組で「子供が大人になりたくないな、と思う時」と言う特集をしていた。料理をする手を止めながらテレビ画面を見入る。一体どう言う時に子供は親に幻滅するのだろうか。

「パパがパンツ一枚でお風呂から出て来た時」
「目の前でぶぶぶーっとオナラをした時」
「食事をしながらお尻をかいた時」

 後で考えてみると、爆笑してもおかしく無い内容なのだが、私は一人納得してしまった。そうだよなあ。厭だよなあ。実は私も旦那のこうしたマナーとも習慣とも言える物が乱れ閉口していた一人であった。人に相談できる内容でも無いし、最近は付けっぱなしの電気や出しっぱなしの服を黙って片付けるようになっていたのだが、テレビの中ではそうした行動を子供たちがギャーギャー騒ぎながら行っていた。

「パパ又電気つけっぱなしだよ!」
「パジャマ、脱ぎっぱなしにしちゃダメだよ」
「ご飯ボロボロ落として汚いよ。はい。これで拭いて」

 何だ我が家だけでは無かったんだ。と言う親近感が沸いた。
 そして翌日、娘が見ていたアニメの中に、裸で出て来る両親にバタバタ困っている主人公の姿があった。娘と共に顔を見合わせる。これはやっぱり我が家だけの事では無い。これは問題提起をして何とかしなければ……私は心の奥底でそう思った。

 我が家を一つの例としてあげると、旦那は昔からこうした行動を繰り返して居た訳では無い。出あった頃は若いのにきちっと姿勢が整って居て、それだけで驚いた物だ。両親と話すときも礼儀正しく、違和感無くこなしていた。何時からこうなってしまったんだろう……幾ら考えても思い出す事は出来なかった。

 心理学的に考えてみると、服を投げ飛ばしたり、パンツ一枚でフラフラするのは旦那自身が自宅でリラックスしている状態であるからだと思う。「この家では俺が一番偉い!」と分っているから、咎められても心に残る事は無い。本人的には自分の置きたい所に、一番取り易い所に置いているだけなのだから、違和も無い。

 食料をぼろぼろ落としてしまうのも姿勢自体が崩れているのだから致し方の無いとは言わないが、当然の事で、特に仕事で疲れていると指先の腕力も衰えてしまうので状況としては更に悪い。母親の気持ちとしては子供にはきちんと躾を教えてあげたいので、その見本として普段の行動には細心の注意を払う。のが普通だと思うのだが。

「うるせえ。面倒でそんな事やってられるか」

 考えに考え抜いた私の心理分析を旦那は一蹴した。が、口に出して正式に抗議した事が良かったのか、とりあえずパジャマがリビングで転がる回数は少なくなって来た。パパの行動心理学。考えてみると結構奥が深い。