ドライフルーツに夢中

 二人目の出産を終え早三カ月。早い産婦さんだと来月には仕事に復帰する頃であろうか。出産一時金、出産手当金などが支給されたが家計は相変わらず火の車。自分ではあればあるだけ使っている意識は無いのだが、銀行の口座の残金を見る度に頭が痛い毎日である。
 
 その上娘が春休みで家に居る、となると大変である。普段は一人なので手抜き料理で良かったのがきちっと一食作らなくてはいけなくなってしまうのだ。出産で留守中、旦那は二週間に一度カレーを作って食べさせていたようなのだが、どうもそれが娘のトラウマになってしまったらしい。

「ママ・カレーだけは作らないで、ちょっと大嫌いになってしまったから……」

 ぼそっ、ぼそっと小さな声で語り始める。月の一週目はカレー、二週目はクリームシチュー、三週目はカレーのような具合で、一度作ると二〜三日食べれる事もあり、ただでさえ食の細い娘はかなり参ってしまったらしい。出産直後、旦那は「家事のやりくりなんて簡単じゃないか。俺なんて……」と自慢していたが、確かにそう言う形での節約は簡単なのである。しかし、それでは栄養面でも娘の食生活の面でも間違っていると思う。ある程度のお金を使って、旬を生かした料理を作る。それが家族の為、自分の為になり、明日への勇気へと続く楽しい食生活へと繋がって行くのでは無いだろうか。

 とは言え仕事復帰まで、好むと好まざるに関わらず、節約生活をしなければならない。

 色々と考えた結果、趣味と実益を兼ね昼食にはパンを焼く事にした。出産前時間を見つけてパン教室に通っていた腕を今見せてやる! とばかり娘より早く起きてパンをこねる。パン焼き機を使って生地を作る事もあるが、やはり私は手コネが好きである。朝から元気良く、バシン・バシンと生地をこねる。ストレス解消にもなり、一回の作成コストも百円かからない。ちょっと多めに焼いた日は近所の人にお裾分けするのも楽しい。焼きたてのパンはフカフカで、大概の人は大喜び笑顔で受け取ってくれる。

 昨日はクルミパン、今日はチーズパンとバリエーション豊かにお昼のご飯の時間に合わせてパンを焼き上げる。焼き始めて分かったのだが、パン生地のほかに追加する食材の事を「副食材」と言うのだが、これを揃えるのが一苦労なのである。チョコレート、チーズ、クルミ、レーズン、プルーンなどなど。生の食材は日が持たないのでパンには向かない。やはり向いているのは長期間保存が可能なドライフルーツである。

 ドライフルーツの代表格と言えば「レーズン」だろう。最近の研究では鼻炎に効く事が分かって来ており、定期的に摂取するようにすると効果があるそうだ。我が家では旦那がヨーグルトに入れて毎日食べている。色々と買って見ると分かるのだが、一言にレーズンと言っても色々あり、葡萄を枝のまま落とし乾燥させたレーズンや、中国産のグリーンレーズン、有機栽培されたなど「レーズン買って来て」と一言言われただけでは、実はスーパーで途方にくれてしまう程種類がある。パンに適しているのは枝のまま落として完熟させた「完熟レーズン」であろうか。値段的には少々値が張るが、レーズンの皮が薄く糖度も高いのでそのまま食べても美味である。

 産前産後の妊婦の必需品の「プルーン」これもパンなどに織り込むと非常に食べ易い。種無しの物から種有りの物、又シロップ状にされた物などが販売されている。パンに使用するのであれば、種無しの物が便利だが、多少の手間を惜しまなければ種ありの物を購入し、せこせこ種を外し加工してみるのも楽しい。

 みのもんたの「思いっきりテレビ」などで紹介された事により、昨年から目に良いとブームの「ブルーベリー」これもドライフルーツで販売されている。値段的には一般的なスーパーで売られているドライフルーツの中では一番値が張るような気がする。さっぱりとした味わいで、パンに練り込んでも色は付かない。元の果実サイズの二割程なので目に良いと言う効果を実感したい人には果実そのままよりもオススメかも。味わいもきつくなく子供でも食べられる味。

 ドライフルーツにも旬がある。食べて美味しかったのは「イチゴ」のドライフルーツだ。乾燥させたイチゴを砂糖漬けにし、ドライ加工した物で、一度これを入れてパンを焼くと又次入れて焼いてみたくなる事請け合いである。

 その他「クランベリー」や「アンズ」などもあるが、彩り混ぜると子供に受けるので少量づつ用意しておくと、クッキー作りなどを行う時夢が広がり楽しくなって来る。ドライフルーツの良い所はそれなりに味があって、体に良い素材が多い事だろうか。ナッツ類ではクルミを良く使用するが、塩味が付いているナッツが多い為パパのお酒のオツマミには向いていても、パンに入れるには不向きかもしれない。

 焼きたてパンにドライフルーツを入れて、オマケにミルクたっぷりのスープでも付ければ昼食のメニューは立派に出来上がりである。幼稚園が始まるまであと一週間。頑張ってパン焼きを続けよう。と大量に溜まり切ったドライフルーツを見詰めながら悩む今日この頃であった。

「残ったら残った。その内使うでしょ」

 途中で節約生活がどこかへ行ってしまった。ような気がした。私のこの春の作戦は成功に終ったのか、失敗に終ったのか、今は怖くて計算できなくなっているのが正直な所である。

ではまた。