梅宮アンナの子育てを考える

「妊娠して二十キロ体重が増えました。
 胸が崩れるので母乳は一度もあげていません。
 乳母は六人居ます。
 生後四ヶ月から添い寝はしていません。
 飛行機で移動の際は睡眠シロップを飲ませています」

 日本テレビ系十月十三日放送”おしゃれ関係”及び”笑っていいとも!”での梅宮アンナの発言を聞いて、日本列島のママさん達に激震が走った。意見は賛否両論と言いたい所であるが、実際は批判的な意見の方が多かった。「子育てを何だと考えているんだーーー」「あの馬鹿女ーーー」と言う意見が多い中、私は決してアンナの子育ては間違って居ないと思った。

 公開された赤ちゃんの写真を見る限り虐待の痕は無く、元気にすくすく育っているのが良く分る。現在子育てを苦に、子殺しをする母親が後を絶たない中、経過はどうあれ赤ん坊が元気に育っているのだから、それを他人がとやかく言うべきでは無いと思う。但しアンナが子育ての結果ノイローゼになり、家族に八つ当たりするまでになるには、上記の子育て方法が一つの原因である事は間違いが無い。一見楽そうに見えるアンナの子育て法、考えてみると実際はそうでも無いのだ。

 アンナが実践している子育て法を総称するのであれば、どちらかと言えば”アメリカ的”な子育て法であると言える。まず体重が二十キロ増えたと言う事を自己コントロール不足と批判する人が居るが、アメリカ・中国・韓国などでは妊娠したら”食べろ・食べろ”的な教育をする事がある。日本も昔はそうであったと聞く、しかし現在日本の妊婦は通常体重十キロ辺りを越えると、偉く医者に怒られる傾向がある。

 これは産後の元体重への回復を早くする為では無く、妊娠中毒症対策として取られている方策である。「小さく産んで大きく育てる」現実問題、無論沢山食べた人でも妊娠中毒症にかからない人も居るし、一番の原因として妊婦の太り過ぎが挙げられるかと言うとそのような事も無く、実際の原因は不明となって居る。太平洋戦争の頃、妊婦の栄養状況が悪かった頃に妊娠中毒症が減った事から、有力な原因として挙げられているに過ぎない。又罹ってしまったとしても早期治療すれば、殆ど問題無く出産を行う事が可能であると言う。

 別段妊娠中太る事に関しては担当の医者が煩いか、煩くないかの問題であると言っても言い過ぎでは無いのかもしれない。近年「コロコロに太って妊娠中毒症を併発した妊婦の相手を毎日するのが厭なんだよ」と切って捨てる産婦人科医の談話を読んだ事がある。酷い言い様であるが、妊婦にとってこの”体重増で先生に怒られる”と言う事がかなり大きなストレスと成っている事を産婦人科医はご存知なのだろうか? 友人の間でも「あそこの先生は体重増に煩くないから」と言う理由で先生を選ぶ事は珍しくは無い。

 私自身妊娠八ヶ月で五キロしか太っていないと言ったら、

 若いママさんには「偉いわねえ」と尊敬されてしまい、
 九十歳近いおばあさんには「食べる物食べてるの? 子供の為にもうちょっと頑張りなさい」と叱咤激励されてしまった。

 確かに二十キロは太りすぎかもしれないが、本人が元気であればやはり他人が口出す問題では全く無いと思う。

 赤ん坊が生まれる前に子供部屋を作り、幼い頃から自立心を持たせる。こうした子育て法が日本に入ってきた事もあったが、今はむしろ幼い頃から自分の部屋に篭り親との交流を持たない事が一つの社会問題となりつつある。”子供が何をしているのか、親が知らない、知ろうともしない”と言う現象である。

 実際子育てをしてみると分るが、普通生後四ヶ月ではまだ子供は夜ミルクを求めて夜泣きをする。夜何度も起きてミルクを与えオムツを変えるのは確かに親にとって苦痛であるが、この苦痛に耐えられるようになるのは生まれて直ぐに初乳を与え、ホルモン視床下部に刺激を与え母性のスイッチが入っているからである。

 母親は生まれた時から母になる訳では無い赤ちゃんを産み、乳児期における密接的な関係によりスイッチが入るのだ。体の中に耐性が出来、強いストレスに耐えられるようになる。子育ては常にストレスの連続だ。オムツを変えた次の瞬間に汚されたり、折角飲ませたミルクを吐き出されたり。そうしたストレスに耐えられるように母親の体は自然に変化して行く。

 増えてしまった体重もかなりの部分は母乳を上げる事により解消する事が可能である。無論胸が垂れるといった事は避けられないであろうが、どちらを選ぶかは個人の自由であろう。現在の人工栄養”ミルク”だけで子供は確かに立派に育つ事が証明されている。しかし、いくつかの問題としてその分、親の免疫を受け取れないので風邪を引きやすく、母乳に比べ子供が肥大化する事が上げられる。風邪を引けば病院に行ったりと親の手間が増す事は間違い無く、赤ちゃんが肥大化すれば抱き上げる母親の苦労は増し、ある意味子育てがしにくくなる。又幼児期初期の食生活は肥満の原因である白色脂肪細胞の数を増やしてしまう事が弊害のとして上げられている。

 最近の幼児研究では母乳を七ヶ月まで上げた人間と、それ以前に母乳を切り上げた人間の知能指数を比べると実に十ポイント以上母乳で育った人間の方が高かったと言う結果が発表された。確かに人工乳で赤ん坊は育つ、しかし将来的に頭の良い、スリムな子供を育てたければ、と考えると答えはおのずと見えてくるのかもしれない。

 日本中のお母さん達を激怒させたのはおそらく最後の”飛行機で移動の際は睡眠シロップを飲ませています”と言う事であろうか。色々と調べてみるとこのシロップは”トリクロリール”と呼ばれる睡眠導入薬であると言う事が分る。普通心電図検査やCT、MRI検査の際に赤ん坊を大人しく眠らせ、検査をしやすくするために使われる事が一般的である。「煩いとついついシロップを飲ませてしまいたくなる」と言うのは冗談であろうが、飛行機に子供を乗せると確かに煩く騒ぎ、人様に迷惑をかけてしまうのである。

 原因の一つとして密室であり赤ちゃんにとってはそれだけでストレスが発生し易い環境である事や、地上と気圧差があり、乗っているだけで赤ちゃんが落ち着かないと言う事があるのである。

 実際二歳の時に娘を飛行機に乗せた事があったが、目的地到着の際機内の気圧が一気に変化した際は大分本人混乱し、前に座っていた子供と不可思議な奇声を上げ騒いでいた。親の耳にもキーンと気圧変化を感じる事があるのだから、機敏な赤ちゃんであれば負担は尚更であろう。一番は赤ちゃんが大きくなるまで飛行機に余り乗らない事であろうが、日本の医院でも昼夜逆転している赤ん坊などに処方する事があるそうである。そう考えるとアンナが飛行機搭乗の際薬を使用した事は、多少説明が足りなかった事が否めないが、決して間違った事では無く、正しい事であった事が分る。しかし余談としてこの薬の副作用として、減量、悪心、嘔吐、胃痛、めまい、ふらつき、などがあるそうだから、使わないに越した事は無いようである。そう。間違っても「泣いて煩いから」と言う理由で飲ませてはならないのだ。

 少子化が進む現代において、楽しく子育て、楽に子育てと考える事は当然であると思う。個人的な意見として言わせて頂ければ、最初は多少手間がかかっても昔通りの子育て、をしていた方が後々大分楽である事が分る。私は生後七ヶ月で風邪を引き、抗生物質を飲み母乳を断念したが、娘も夜大分泣かないとミルクが貰えない事に気がついたのか、その後は夜泣かなくなりミルクを我慢する様になった。増えた体重もその頃には元に戻り、生活に余裕が出て来たのを覚えている。仕事に復帰したのはアンナと同じく娘が生後一年を経過した辺りからだけれど、娘は素直にそれを受け入れ、午前中は公園で遊び午後は昼寝をすると言った生活に自然に馴染んで行った。

 梅宮アンナの子育て法、決して間違っては居ないと思うけれど、見た目これが楽だとは到底思えない。本人は「三人は子供を産みたい」と言っているそうだが、是非二人目を産む際にはもう少しご検討頂きたいなと思う。芸能人の影響力は大きい物、今後赤ちゃんを産む女性が、将来の夢を持てるよう。今後の活躍を期待したい。