2002年夏。美味しいビールを探して。

 旦那の幸せって何だろう。それは昨年の夏と相変わらず、疲れて仕事から帰って冷えたビールを飲む瞬間では無いだろうか。

「この一瞬の為に生きてるよな!」

 とは言わないものの、日々観察をしていると、かなり幸せそうな顔をしている。逆に冷蔵庫にビールが無いとかなり不機嫌で、ぶちぶちと説教が多くなる。ジョッキ一杯のビールで人間がかくもこれだけ変るのかと日々思ってしまう。

 一時は愁傷に「ビールだけは冷蔵庫から切らさないようにしよう」と思ったが、ビールって買ってくると結構重い&高い事に気がつき結局思うだけで、中々実行はしていない。以前は酒屋さんが重いビールの配達などが行われていたが、やはりビールの世界にも価格破壊の波が押し寄せ、そうしたサービスはめっきり見られなくなって来た。

 ここ数年は格安の酒屋店も徐々に店じまいをすると言ったケースが増えてきている様である。理由としては格安の酒屋をオープンさせても、結局”ビールの値段”一つで店の存在価値が決まってしまったからであると言う説が有力である。結局消費者は殊ビールに関してはサービスや店の雰囲気よりも、一本辺りの単価が一番重要であったようである。

 そんな中、SMAPの香取君が、声高らかに、樽生(一番絞り)の専用サーバーのCMをしていた。家庭で飲むビールと言えば発泡酒。季節毎に発表される新作ビールも発泡酒と言った時代に純然たる”ビール”の新作を発表したのである。スポットで放送されるCMの内容から察するに、この機械さえあれば、自宅で生ビールが楽しめるようなのである

*この機械は関東甲信越限定発売です。
 インターネットでも購入は出来るようですが、在庫切れが続いているようです
 http://www.rakuten.co.jp/mikiya/433548/
 
「もしかしたら旦那が喜ぶかも!」
 
 ささやかな旦那の喜びを探して、サーバーを求めて近所のスーパーのお酒売り場を放浪する事数回。この商品は人気があるらしく、サーバーはおろかビールも全く手に事が出来なかった。ビール本体の部分はあちこちで売られているのだが上部のヘッド・サーバー部分がどうしても手に入らないのである。

 ニュースで伝え聞く所によると、この部分は現在マレーシアで生産が行われているそうだが、あまりの好評につき当初は船便にて輸入をしていたのを、現在は費用のかかる航空便にて日本の消費者に向けて配送を行っているのだと言う。昨年発売され好評を博したバンダイの”なんちゃってサーバー”は今年苦戦しており、近所のデパートにて数百円にて販売されていた。これだけ値段が下がっても買う人の数はそう見かけない。ビール好きの旦那に言わせると「一度はやるけど、面倒くさくて二回目にやる人は少ない」のだそうだ。しかし本格的な炭酸ガスを使用したビールサーバーは今もまた1万円近い。庶民が気軽に購入するにはちょっと敷居が高いのである。

 余談として、今年バンダイはビール関連商品として『釈お酌』 『シャクライ君』を発表した。楽しいお酌シーンを演出するロボット! としてこれはこれで多方面の手酌ファンに受けているのだという。探してみるとあちこちの店舗で在庫を発見した。これなら簡単に手に入りそうである。しかし完全に”ビールファン”である旦那はこうした小手先だけのマシンに興味は無いのだと言う。「どうせなら旨いビールが飲みたい」機械が手に入らないだけに夏の暑い季節を背景に欲望は高まるばかりである。

http://www.bandai.co.jp/press/press_P00248.html

 サーバー機を探し始めて2週間後、ようやく近所のコンビニから入荷の連絡が入った。慌てて受け取りに走るがサーバー自体はそう重くはないのだが、ビール本体が1520mlとかなり重量感があった。サーバーは2980円、ビール本体は1240円。高くは無いけれど、発泡酒の価格に慣れている人間にしてみれば少々高めに感じる。サーバーは使用後洗浄すれば何度もでも使用する事が出来、ビール一本に必ず専用炭酸ガスボンベが付属している。”飲みたい時に飲みたいだけ”開封後は何と一週間も鮮度が継続するのだと言う。事実開封した翌日飲んでみたが、味は全く変らなかった。

「やったーーーー。うんうん。ありがとうなあ」

 いそいそとサーバーを開け、炭酸ガスを取り付ける。装着にそれ程難易度が居る訳では無いようだ。旦那はかなり幸せそうである。いい事をした。炭酸ガスを使用するのでもっとダーと勢い良く出るのかと思いきや、ビールの噴出するスピードは思いの他早くは無い。ちょろちょろと黄色い液体がジョッキを満たしていく。その上に乗る泡は確かに缶ビールには無いクリーミーさである。

「うまい!」

 放っておくと1520ml全て飲み干してしまいそうな勢いであった為、数杯飲んだ後は草々に冷蔵庫にサーバーを移動させる。冷蔵庫のドアポケットにすっぽり入るサイズなのはありがたい。「夏休みだけ」という約束で旦那の生ビール生活は始まった。途中飲み過ぎを防ぐ為に缶の発泡酒を挟んでいたが、やはり泡の具合や味を比べると一目瞭然。昨年までの”なんちゃって”サーバーとは明らかに違う本格的な味わいである。

「やっぱりこの泡だよ。泡!」

 近隣・近所でも現在この樽生が密かな人気となっている。来年は全国発売されるのか? 現在キリンにおいて正式発表はされていないが、その可能性は大であると思う。もし販売されているのを見ましたら、是非一度お試しを!

キリン樽生絞り
http://www.kirin.co.jp/brands/tarunama/