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台風の中病院へ 〜病気は病院で作られる?

 2002年7月。関東地方は雨が続いたり、突然晴れたりとしたあやふやな天気の日々が続いている。そんな、今年初の台風が関東地方に近づいたある日の事、台風の時に病院に行けば待合室も空いているだろうと単純に思い、私は午前中の早い時間に病院へと向かった。

 一抹厭な予感もあったので直接病院の駐車場には向かわず、車は最寄のスーパーに止め、雨の中傘一本徒歩で病院へと向かう。びちゃびちゃになった傘の滴を振るい病院の中に入る。「空いてるかなあ」と思い待合室を覗き込むと、結果大雨にも関わらず病院内は大入り満員。大盛況の様子を呈していた。

「台風の中病院に来なくたっていいじゃないか!」

 怒りを隠しつつ、診察を簡単に終え草々に帰宅する。
 先だっての新聞の投稿欄にて

「診察の時間よりも、先生がパソコンに向き合っている(診察情報を入力している)時間の方が長い。これでは何の為に病院に行っているのか分からない」

 とコメントしている人が居たが、その日気になって先生の動向を見ていると、私の時も全くそのとおりであった。今もカルテに病状は記入はしているのだが、次の予約や採血の予定などを拙い手つきで、先生はお手盛りの会話をしながら入力する。確かにどう考えてみても患者を見つめている時間よりも、パソコンのディスプレイを見つめている時間の方が長い。

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 先だって腹痛を起こし、診察を受けた時の事なのであるが

一回目 腹部を診察 採血 → 普通の診断
二回目 結果を聞く + 子宮筋腫の検査を行おうと言われる

「じゃ、子宮筋腫の検査をしておきましょうか。じゃ、隣の診察台に」
「え、それはいいですよ。強制ですか?」

 先生は患者に診察を拒否される事を想定していなかったらしい。私は病院は大嫌い。用が済めばそれ以上余計な診断を受ける気は無かった

「5分位で済みますよ。すぐですから受けておいたほうがいいですよ」
「結構です。帰ります!」

 受け付けで支払いを済ませ草々に家路へと向かう。これでまた検査を受ければ又次回結果を聞きに来て下さいと言われる為、迷惑なのである。
→後日子宮筋腫の検査は何回か通う内に勝手にされてしまった

 治療は出来れば1回で済ませて欲しい。結果がもし問題無いのであれば後日郵送して連絡すると言ったサービスは実施できないのだろうか。「問題ありませんでした」この一言を聞く為だけに2時間以上待合室に並び、順番を待つのは時間の無駄以外の何物でもないと思うが如何な物であろうか。

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 昨年も国会の議題に上っていたが、今年も健康保険の自己負担率増について(2割→3割)議論が交わされている。小泉首相は”三方一両損”と語っているが、あるジャーナリストによると医療報酬が例え-2.7%引き下げられたとしても、医療機関側としては薬の種類を増やしたり、検査の一つも増やせばこうしたマイナス分は帳消しになるのだと言う。”医療費を減らすには病気を減らす事であり、同時に病気を効率よく治すことである”とジャーナリストは語る。全く持ってその通りだと思う。

 この不況の中、給料は上がらず医療費だけが上がって行く。必要であれば仕方が無いとも言えるが根本的な解決が必要では無いかと思う。今回の自己負担率値上げについて日本医師会は反対の姿勢をしているのだと言う。理由は

 ”自己負担率2割負担となったときに患者の数が減って困った。3割になったら、もっと患者が減るかもしれない”

 からであると言う。患者が減ったら病院は倒産する。ちょっと考えてみればその対策方法は目に見えてくる。

 もしかしたらでは無くて、今後自己負担率が増え患者が減った場合、更に病院に行く回数や薬の点数は増加してしまうのかもしれない。恐ろしい話である。

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 3年程前に歯医者さんに行き歯石を取ってもらった時の事だ。たかが歯石を取ってもらう為だけに、3回も通わされた上に、更にもう一度来いと言われた時は流石に切れてしまった。

「何でたかが歯石を取る為だけにこんなに何度も来なくてはいけないんですか!」
「毎回それ程時間がかかる訳じゃないですから、頑張って下さい」

 と言われた。小さい頃歯石を取る作業は大概虫歯を治療し終わった後、助手のような人が一回で取ってくれたのを覚えているだけに、怒りはそんな先生の説明では癒されなかった。色々と調べてみると分かるのだが、驚いた事に国が推進している正常な治療をしているのは4回かけて歯石を取った先生である事が分かった。

 何故4回という回数が治療にかかったのか、まず1つ考えられるのは保険治療にて1回の治療で保険が適用されるのが6本なので、右上左上右下左下と4回通わなくてはならなかったと言う点であるが、国の保険治療によると、歯石の除去については

初診 P基管、歯周基本検査1
再診 上顎3/3スケーリング
再診 下顎3/3スケーリング
再診 歯周基本検査2

 となっている。もっともこれは関東近辺に限った指示であるようだが、又助手などが代行して歯石を取ったりする行為は不正行為とされるのだと言う。患者にとってどちらの治療行為が有益であるか、考えてみれば明らかなのだが、お上がそれを駄目だと言っているのである。これは一患者である私がどのように騒いだところで回数が減ろう訳が無い。

 歯石は半年から一年単位でどんなに上手に歯を磨いていても付いてしまう物であると言う。ならば、診療報酬が高い歯科医師だけでは無く、一定の資格なり技術を持った助手にその診療を任せると言った事は出来ないのだろうか。このような診療の一つ一つを見てみてもこの不況の中、妙に時代錯誤感を感じてしまうのは何故だろうか。

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 その他娘のアトピー治療の為病院へ行く事もある。現在は症状が落ち着いているので診察は受けず処方箋だけを受け取るだけだが、これまた今年の3月までは2週間分までしか薬が出ず、月に何度も行かなくてはならず、不便であったが4月から薬が1ヶ月分出る事となり大分楽になった。(噂によると2か月分は出るようになったとか)

 今日もまた病院はどこも大入り満員。

 雨が降ろうと台風が来ようと、病院が次の病気? 機会、必要性を用意するのでお客は引きも切らない。それでも楽しい場所であれば喜んで来るのだろうが、大概の場合は、診察の際はベルトコンベアに乗せられた物の様にあちこちに回され、不愉快この上ない事が多いのは何故だろうか。

 私が今まで一番不愉快であったのは、産婦人科の診察で、下着を脱ぎ診察台に足を広げたままの状態で5分以上放置され診察されるのは1分以下。一人の先生がいくつかの診察台をぐるぐる回って診察する為、患者は普段しなれない相当恥かしい姿勢でずっと待って居なくてはならないのである

患者の恥辱心 < 先生の利便性

 と言う方程式が当たり前の様に成り立っているのである

 娘を妊娠した時はこの先生を待っている時間が物凄く厭だった。患者の人権・気持ちなど毛程も考えていない。こんな病院を好きだという人の気が私は全く知れない

 以前こうした患者軽視の病院の態度について、

「病院の患者の椅子が丸椅子で、先生が肘つきの椅子を使っている日本の病院経営が良くなるはずが無い」

 とコメントしていた人が居たが、そういわれて病院の椅子を見ると、本当に患者は丸椅子で、先生は肘つき椅子であった。患者はお金を払っていてもお客では無いのである。

「病院なんて大嫌いだーーー」

 結論めいた物を言うのであれば、負担増は仕方が無いが、それに比例し病院へ通う回数が増えるようになっては困ると言う事である。数年前に比べその数は実体験の中でも増えてきているように思う。無論それは若い何をやっても体調を壊さなかった頃から、ちょっと無理をするだけで動けなくなってしまう状況に遷移したから、軟弱になって来たからとも言えるかも知れない。しかし人は何時しか老いていく。今の日本の医療制度を改めて見つめてみると、何だかそら恐ろしい気持ちになって来るのは何故だろうか。

 体調を崩さないように自然食を心がけ、できるだけ病院に行くきっかけを減らそうと心がけながら、今日もまた一日があっという間に終って行く。

参考
歯石除去マニュアル
http://www.honda.or.jp/okuchi-kenkou/html/manual01.html
週間 文春 キャンペーン まやかしの「三方一両損」6/27-7/4
 富家 孝(医療ジャーナリスト)
 中原 英臣(山野美容芸術短大教授)
医療改革制度
http://tpclub.itp.ne.jp/backno_vol16/vol_14/bi/bi3_vol_14.html


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