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梅雨の風物詩ーカタツムリはどこへ?

 私の4歳になる娘はお絵書きが大好きだ。「忙しいから、今遊べないよ」と言うと、大概クレヨンを使って大人しく絵を書いて遊んでいる。一枚書きあがるのに10分以上かかるので仕事の合間合間に話をしながら相手をするのは決して苦では無いし、むしろ楽しい事である。

 本日も本人色々と考えた結果なのか、虹色に輝くこった色のカタツムリの絵を書いていた。色はともかく何か形がおかしい。殻の部分に角と長い二本の足が生え、その下はオレンジ色のスカートをはいている。変だ。子供が書いた絵であるとしても、これはどこか絶対におかしい

「みきたん。実はカタツムリ見た事無いね」
「どき」

 本人も大きく間違えた事が分かったのか、慌てて書いていた絵をゴミ箱に捨て次の作品に取り掛かる。実際良く分かっていないらしい。今度手元に届けられたカタツムリは殻の部分に目と鼻が存在する又しても不思議な形状をしたカタツムリであった。

「知らないなら知らないって言えばいいのに」

 仕事中でパソコンを立ち上げていた事を幸いに、マイクロソフトのクリップオンラインにてカタツムリの絵を探し出しプリンタで打ち出した。この絵も胴体の部分に顔が書いてあって正確にはちょっと違うのだが、雰囲気はおそらく伝わるだろう

「カタツムリってこう言う感じ。分かる? 今度実物見に行こうか」
「そうなんだー みき知らなかったよ。なるほど・なるほど」

カタツムリの話(カタツムリが交尾する写真が掲載されています)
http://www.asahi-net.or.jp/~fg9a-wtnb/nature/snail.htm
エスカルゴ養殖
http://www.avis.ne.jp/~shigeki/
FERC
http://www.ntv.co.jp/FERC/
それは静かに脳にやって来る
http://ntv.naver.co.jp/go.php?url=http%3A%2F%2Fwww.ntv.co.jp%2FFERC%2Fresearch%2F19990627%2Ff1337.html
アフリカマイマイって怖いの?
http://www.so-net.ne.jp/kagaku/naze/hon/cat_a_1_21.html
カタツムリのフンて何色?
http://www.nnet.ne.jp/~zen/jiro/untiku/un2.html

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 考えてみれば、近所のレストランに”エスカルゴ”が通年メニューとして並ぶようになったのにも関わらず、昔はゴロゴロ生息していたカタツムリが最近見られなくなってきた。これは何故なのだろうか。

 カタツムリは海からの巻貝が陸に上がり進化した生物であり、ナメクジは更にそれから貝の部分が進化をした生物である。特筆すべき点はカタツムリは雌雄同体であり、いつでも雄になり雌になる事が可能であるという点である。雄雌確認するまでも無く適当に二匹のカタツムリをゲージに入れておけば勝手に繁殖を開始するのである。(残念ながら一匹だけでは繁殖しない)寿命は1年半から4年程。一説には卵を産んだらそれが寿命とも言われている。

 交尾を行った後はカタツムリは双方が50ケ前後の卵を土の上に産み、卵は一ヵ月後程で孵化。繁殖力は抜群である。日本ではペットとして飼われる事のあるカタツムリは、欧米においては憎むべき害虫であり、発見され次第踏みつけられ駆除される運命にある。どう間違っても飼われたりと言った事はあり得ないそうである。

 日本においてレストランに頻繁に並ぶようになった理由としては、フランスなどからの輸入だけでなく日本国内においても食用に足る程の大きさまでにカタツムリを生育させ養殖する技術が発達してきたからに他ならない。しかし一旦カタツムリが脱走した場合、畑など農産資源を食い荒らす可能性が高い為、繁殖許可は非常に厳しいのだと言う話を聞いたことがある。現在はインターネットにて繁殖セットが販売されているが、数年前はエスカルゴの繁殖上で数匹のエスカルゴが逃げただけで大騒ぎとなり、ニュースとして新聞紙上を賑わしていたのを覚えている。

 であるからして、

 近所で見かけないから田舎で捕獲してこよう→折角だから自宅で飼育

 までは種類によってはギリギリ許可される範囲であるとしても、これを 

 飼うのに飽きた→殺すのは可愛そうなので空き地に捨てよう 

 という行為はその土地の生態系を崩す可能性が高い為大変危険な事なのである。

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 特に沖縄に生息しているアフリカマイマイと言う大型のカタツムリは本州への持込が完全に禁止されている。これはアフリカマイマイが人間に害を及ぼす寄生虫、広東住血線虫に汚染されている可能性が高いからである。この寄生虫は人間の体内に入った後真っ直ぐに脳に向かい、重度の頭痛を引き起こす。現在特効薬は存在せず、寄生された場合は最悪死亡、若しくは寄生虫の寿命・一ヶ月が経過する事を待つしか方法は無い。

 寄生されないための一番の対策は、カタツムリやナメクジなどを触った場合よく手を洗う事であると言う。又アフリカマイマイが這ったレタスなどを生で食べた場合も寄生される可能性があるのだと言う。生野菜は良く洗ってから食べる。有機栽培・無農薬野菜を食べる場合は特に注意をした方が良いと言えるのでは無いだろうか。

「ママ。カタツムリってどんなのなの? 見てみたい!」
「そうだねえ」

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 ともあれ、子供達はカタツムリが大好きだ。恨むべきは寄生されたアフリカマイマイを沖縄に持ち込んだ人物であろうか、容赦無く農作物を食い荒すカタツムリの生態であろうか。フランスなどにおいてはカタツムリの捕獲時期は厳重に決められており保護されているのだと言う。もっともこれはブドウ畑に生息する食用エスカルゴに限った事であるかもしれないが……

「カタツムリはね。ニンジンを食べるとオレンジ色のうんちをして、葉っぱを食べると緑色のうんちをするんだよ。不思議だね」
「へーそうなんだ。それはびっくり」

 通常生物のフンの色は胆嚢によって分泌される胆汁の色によって決定する。人間の場合の胆汁の色はこげ茶色であり、これが水で薄まって黄色く見える。カタツムリの場合はこの胆汁が存在しない為素材そのままの色がフンに反映されるのである。

「いつか会えると良いね。カタツムリに」
「かもしれないね」

 以前は自由研究の素材にカタツムリがよく上げられた物だが今はどうなっているのだろうか。梅雨の止み間に見える青空を眺めながら、カタツムリの自宅への来訪を望みつつもあり、諸事情考えると触らせる事を拒否したくもある今日この頃なのであった。



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