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食器洗い乾燥機を買おう!

 最近の私には一つの悩みがある。
 普通の人が聞いたら大した事では無いのかもしれないが、恥を覚悟で告白すると、猫に噛まれた旦那の傷が三週間経った今もまだ完治せず、食器を洗ってくれる人が居ないことである。ご飯を作って、食べさせて、洗う。たったこれだけの事が何と大変な事か!!!

「パパそろそろ洗物できないかな」
「もうちょっと駄目だな……」

 悲しい……少し言い訳を書かせて頂くと、まずここ最近私自身の調子が悪いので、日中の仕事を終え、娘を幼稚園バスから迎え夕食を作ると言った一連の作業をするだけで一日に使う体力の殆ど全てを使い切ってしまうのである。夜遅く11時過ぎに戻って来る旦那を待ち、眠い目を擦って後片付けをする。それはそれで慢性貧血の私としては大仕事なのである。

「な、だから言ったろう。食器洗い乾燥機を買おうって」
「そうだね。そろそろ買おうか」

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 色々な建前と理由がひっついて、今まで散々拒否をしてきた食器洗い乾燥機を買う事を同意した。早速近所のオークシティに出かけ、品物を物色する。大分安くなったとは言え、最新型のものは49800円!もするのである。ボーナス払いにするとは言え、もう少し安いのは無いか……と思っていたら、座間のダイクマが閉鎖するとの情報が入った。もしかしたら安く買えるかもしれない! 取る物とりあえず家族全員で出かける事となった。

 全品一割引との広告文が売り場を並ぶ。あるだろうか…… 探し回る事数分。発見! 発見しました。何とオークシティにて49800円(定価は58000円)だったものが32000円で販売されていたのである。安い! 予算内である。

「智子これならいいだろう」
「いいです。是非買ってください」

 混み合う人並みを押しのけて、レジにて支払いを済ませる。旦那は「これで会社から疲れて帰って来て洗物をしなくていい……」とかなりホッとした顔をしていた。そんなに厭だったんだ……と今更ながらに気がつく。とにかくこの食器洗い乾燥機の導入で我が家の家事・事情はかなり良くなる、筈なのである。

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 とりあえず、食器洗い乾燥機は買った。しかしこうした機器の場合、買うだけでは使用する事は出来ない現在の水栓に合わせ、分岐水栓と言うのを付けて貰わなくてはならないのだ(一度つけてもらえばその後は必要無いらしい)つまり今一つだけ水流を分岐して片方を食器洗い乾燥機に付けるのである。

 無論分岐する必要が無い、つまり水栓が台所に余っている人はこの工事の必要は無い。水流さえ確保できれば後の設置はホースをつけるだけで至って簡単。素人でも、誰でも出来るのである。

 購入先にて取り付けも依頼したのだが、取り付け費用が4000円で、分岐水栓代が5000-14000円と決して安い金額では無い。しかも、当たった依頼先がいい加減で、私が仕事をしている最中、何度も何度も別の人間から同じ内容で電話がかかって来る。

「水栓を付けるのにはまず伺って、見積もりをお出ししてからとなります」
「水栓番号分かりませんよねえ」
「時刻の指定は出来ないんですよ。一日居られる日をご連絡下さい」

 言い方が気に食わないだけでなく、どうもやる気が無い。営業マン口調ではどうしてもないのだ。社内の人間に聞くよりも実際に客に聞いた方が早いと思っている様なのである。この不況下にも関わらず、旧態然とした部門間の繋がりが薄い縦割りの会社なのだろうか??? 毎日のようにかかって来る電話に真面目に取り合うのも面倒なので、とりあえず家に来て貰い我が家の水栓を見てもらう事にした。

 数日後、顔を真っ赤にしたおじさんが我が家の水栓を見に来た。心配なので最初から最後までしっかりと立ち会う。30分以上パンフレットを眺めながらおじさんが出した結果は何と”取り付けできません”でした。

「は???」

 既にお金は支払ってしまったのだが、理由が理由だけに返金されるそうである。(数日後には潰れてしまう店だけに、偉い事である)何度も何度も電話をかけてきた結果がこれか! と怒りが湧くよりも、私は何となく「やっぱりね」と言う気がした

「水栓の種類は沢山ありますからねえ。運が悪かったですね」

 電話越しにニヤニヤと笑いながら答える。とにかく分岐水栓が付かなければ食器洗い乾燥機は無用の長物となってしまうのである。私は仕方なく商品をキャンセルする旨を伝えた。

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 娘を幼稚園に迎えに行き、やりかけの仕事に取り掛かる。食器洗い乾燥機にかける期待が高かっただけにドカンと落ちるような”残念だなあ”と言う感覚が全身を襲った。この調子では我が家には一生食器洗い乾燥機はやって来ないのである。がっくり。

 頭の中のある部分ではしおらしくそうは思っていても、理性的な別の部分はかなり情報が整理され怒り湧き上がって来ていた。我が家が建ったのは今から2年ほど前である。そんな古い家でもないのに、分岐水栓が付かないのはやっぱりおかしい。他にも何か方法があるのではないか、と。

 漠然と台所の水栓の根元に書かれている黒文字の番号を控え、さしたる根拠も無く、思い出して前の住人が残しておいてくれた我が家の設備関連の資料をペラペラとめくる。水道屋のおじさんはしきりと”該当品番が無い”と言っていた。一体それは本当なのだろうか。

 おじさんが控えていた番号とメーカー名を確認する。確かに、そのメーカーにその品番は無い。と言うか間違っている。その先頭品番は別の会社の物なのである

「あのおじさん勘違いしてる!」

 ナショナルの水栓をMYMのものと勘違いしているのである。2年前の資料にも浄水器を付ける際につける分岐水栓について写真が残されていた。各社のホームページを調べる内に私の想像は確信へと近づいて行く。我が家に付いている水栓のある部分はMYMからのOEM供給により作成されているものなのである。水栓自体にMYMと書かれている為間違えたのも仕方が無いと言えるのかもしれないが、MYMの製品とは先頭品番が明らかに違う。該当品番が無いのではなく、製造会社を根本的に間違えているのである。

「怒った!!!」

 慌ててダイクマのサービスセンターへ問い合わせる。数分後「やっぱり付きます」との連絡が入った。「やっぱり」とはどう言う意味なのだろうか。確認の為旦那が東芝のサービスセンター(何とこちらは24時間やっている。ありがたい)に問い合わせるも間違いなく付く事が確認された。

「騙される所だった!!」

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 付く事が判明した翌日、見積もりにやって来たおじさんと同じ人が我が家へとやって来た。顔はニコニコで腰には多数の工具を付け、手には購入した食器洗い乾燥機を持っている。

「こう言うの最近出たみたいですねえ。昔の資料じゃわからなかったですよ」

 としゃあしゃあと言う。謝罪の言葉は全く無かった。最新型・最新型を連呼するのだが、我が家では全て調査済みである。請求された金額は水栓代11000円プラス作業費4000円であった。32000円の製品代から考えると高い……

 実際に後でこうした工事の仕事をしている人に話を聞くと、(設備屋と言うそうです)こうした仕事は簡単で専門知識も必要無く自給も良い為、やりたがる人が多いのだそうである。実際に水栓代は業者価格では11000円もかかる筈もなく、今回の例を考えると、大体8000円程度の純益になっているようなのである。

「だからやる気が無いのかなあ」
「簡単なの数こなした方が率がいいからね」

 少しながらも内部事情を聞いて、仕事にやる気が無い事の理由が多少見えたような気がした。実際にやっていた事と言えば水の元栓を締めて、レンチで水栓を取り替えただけである。動作確認も水が流れる事を確認するだけ、確かにこれで4000円は高い。

「ありがとうございました」

 悪い業者に掴った…… でも付いて良かった。そうそう旦那は私から「付かない」と言うメールを受け取ってガックリしたのではなく

「絶対に付けてやる! 付かない筈は無い!」

 と会社でメラメラ燃えていたそうである。私はどんながっかりした顔で会社から帰ってくるかとドキドキしていたのだが、帰ってきた時の旦那の顔は怒りに震えており、付かなければ水栓自体を交換する事も辞さずと言う口調であった。無論そうすれば更に何万円も費用がかかる事になるのだが…… 今回はその手前で付いて良かったと思う。

食器洗い乾燥機設置の際「お湯の水線に付けるか、水の方に付けるか」と聞かれたが、これは何も考えずに「機械自体にお湯を沸かす機能が付いているんですよね?」と答えてしまった。後で調べてみると湯沸かしを機械にやらせるのでは無く、備え付けの給湯器を使用した方がコストパフォーマンスの面で有利なのだそうである。どちらの水栓を選択するのか個人の意見が分かれる所であるが、予備知識としてもし覚えていたならば役に立つ事もあるのかもしれない。
 かくして我が家には食器洗い乾燥機がやって来た。使い心地は、といわれると最高である。今まで何で何故買わなかったんだろうと後悔する事しきりである。ご飯を食べ終ったら食器洗い乾燥機に入れるだけで、手洗いよりも綺麗になって出てくるのである。しかも水道代は手洗いよりもお得! と来ている。年間で2万円程度お得であるとパンフレットに書かれているが、一度食器洗い乾燥機の世界に入るとそう簡単に抜けられないと言う話を聞いた事があるが、それは真実である。

 家庭内における食器洗い乾燥機の設置理由としては”楽だから”と言う事よりも”雑菌の繁殖を防ぐ為””O157対策の為”と言った物が上位に並ぶのだと言う。実際近所の人に聞いてみたが専業主婦がそこまで楽をしてよいのか、と考えると抵抗感が大分あると話していた人が大分居た。”楽”の上に”安全感”と言う単語がついて、現在食器洗い乾燥機はかなり売れているようである。

 欧米においては既に食器洗い乾燥機は台所の標準装備となっていると言う話を聞いた事があるが、確かにこれはつけなければ損である。特に共働きの家庭には必須であろう。これからのボーナスの季節。もし宜しかったらあなたの家庭にも食器洗い乾燥機の導入を考えてみては如何であろうか。もし今回の話がそうした機器導入の役に立てば幸いです。無論トラブル無しで付く事が一番なのですが、

 ではまた




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