ライン




みずほ銀行・システムトラブル発生!

 私はソフト業界に足をつけて、大体今年で十年目になる。今まで色々な開発に携わってきた。コンビにのPOSシステムから大企業のシミュレーション・システムなどなど、そんな中で唯一手をつけなかった業界がある。そう。それは銀行関連業界である。

「草川さん(旧姓)くれぐれも銀行関連に手を出さない方がいいよ。潰しが利かなくなるから」
「え???」

 学生時代、東京の某銀行の内部システムのテストに参加した時の話である。左程難しい仕事ではなく、作業は予定通り一ヶ月で終了。上記の言葉はその時先輩のプログラマーから言われた言葉であった。

 その当時銀行関連システムの開発言語はコボルであった。色々と自分なりに考えた結果、私はそのアドバイスに従い以後一切銀行関連システムには関わらぬよう注意してきた。
 月日は流れ、銀行業界においては、その当時では考えられないような事態が発生した。各銀行の統廃合事業である。コボルを使える人間は非常に少なく、統廃合が起こる度に一度引退したはずの主婦プログラマーも無理やり駆り出さた。という噂が流れるほど、人員不足は熾烈を極めた。とにかく昔の言語で仕様書も残っていないような状態のシステムを直すのである。大変で無い筈が無いのである。

「大変ですねえ」
「池田さんコボルはやらないんだよね」
「ええ。それだけはやらないですねえ」

 十年前にした決断が正しかったのか、十年前に比べ銀行を取り巻くシステム関連事業の状況は明らかに変わりつつあるようである。

みずほ銀行
http://www.mizuhobank.co.jp/

----------------------------------------------------------------------

 そうした中、今から二年半前、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が合併し、みずほ銀行及びみずほフィナンシャル銀行となる事が発表された。開発期間は二年半ある。その甘えがあったとも、銀行三社の縄張り争いがあったから、いやいや単純に予算が無かったからとも言われているがみずほ銀行に構築されたシステムは銀行三社のシステムをそのまま生かし、間に緩衝プログラムを入れ処理を行うと言った物であった。

「この日程では無理です! 絶対にトラブルが起こります!」
「もう最終日は決まっているんだ。やってもらわなくては困る!」
「無理です!」
「無理なのをやるのが君達の仕事だろう!」

 おそらくはこんなやり取りが連日続いたのだと思う。
 銀行三社に入っていたコンピューターの種類はそれぞれ違う。よって開発を行っていた会社もそれぞれ違うのである。今まで行っていた仕事がゼロになってしまうかもしれない。そう考えた開発側の人間が銀行側に強く言えなかったと言う事あったのではないだろうか。

 実際、開発を行った人の言葉によると、締め切りはきつく、支払い金額もあまり良くは無かったらしい。結果途中で逃げ出す人間が多数居たと報じる週刊誌もあった。

 システム基幹部分の設計に問題があった。設計者であるべきSEがみずほ銀行側負けてしまったと言うことが一つにいえるのかもしれない。開発が遅れれば、その他のデータ入力作業も徐々に遅れていく。支店コードの打ち直しに振り替え用コードの変更作業。一説によるとデータを変更した後の運用試験は一度も行われては居なかったのだと言う。当日何が起こってもおかしくない状態。一説によるとみずほ銀行の社員達は万が一の事態を恐れ、自分の預金は全て引き出し、保管をしたという噂さえも上がっている。どう考えても最初から何が起こっても不思議では無かったのである。

----------------------------------------------------------------------

 今回発生したトラブルについて、まず我々が気にしなくてはいけないのは、例えばカード会社や電力会社などに振替が正常に行われていなかった場合、延滞料金やブラックリストに載る可能性があるのか、無いのかという問題である。
 
 今回はそうした振替のトラブルの原因はみずほ銀行側にある場合は、延滞金などはみずほ銀行側が支払う事になるそうである。一安心、しかし二重引き落としなども多数発生した様で、テレビ画面に実際に二重引き落としがされた通帳を掲げている人も写し出されていた。それらはすぐに修正されたようだが、気がつかなければそのままであったと思うと恐ろしい事である。

 逆に銀行側が間違って個人口座に振込みを行った場合、お金は返さなくてはいけないが、それは別段全額一度に返す必要は無いそうである。毎月百円づつ二十年とか、のんびりのんびり返しても別段利子が取られる訳では無いそうだ。数は少ないがそうした恩恵を得た人を私は何度か見た事がある。

 数週間前の新聞の投稿欄にこのような事が書かれているのを発見した。

「五年前固定金利で住宅ローンを借りたが、五年が経過し、再び固定金利のままお金を借りようとすると、五年前の約定書によると固定金利を継続して借りる場合は手数料無料と書かれていたのにも関わらず、銀行合併により、規約が変わったとの事で一万五千円を請求された。何の為の規約だと詰め寄っても「永久に渡って手数料無料を約束した物では無い」と手数料支払いを強制された。何の為に規約を交わしたのか、銀行の一方的な言い分により条件が変わるのはどう考えてもおかしい」

 私も銀行ローンを借りた際、こうした手数料の部分については何度も確認したが、こうも簡単に規約が変えられるとは初耳であった。銀行ローンについてはバブルが終った当時、”銀行ローンより**%優遇します”と言った規約を無理やり反故にした銀行も存在したようである。顧客側も寝耳に水の事態であるが、言われた通り判を押してしまった人は数年にわたって受けることが出来たはずの優遇措置を受けることが出来なくなってしまったそうである。

 無論こうした銀行の横暴が草々通るはずもなく、こうした場合は判さえ押さなければ優遇措置を受け続ける事が出来るそうである。

----------------------------------------------------------------------

 みずほ銀行のニュースを四月一日時点から遡って読んでいくと、美辞麗句が並んだ物から徐々にキツイ辛らつな文章が並んでいく事に気がつく。「万全のテストを行った」から「十分なテストを行う事が出来なかった」「最終試験においてもトラブルが発生していた」「四月一日に何が起こっても不思議では無かった」など。逆にCEOの発言内容は最初から変わらず「人為的なミスが重なっただけ」「クレームがたくさん来ただけで、実害はない」など。今後はシステムがトラブルが一段落すれば、多額な賠償責任などがクローズアップしていくのであろうが、顧客離れや社会的信頼の回復についてはそう簡単に行えるとは到底思えない状態である。

 実際みずほ銀行においては、口座解約や全額引き落としが日々行われている。私ももしみずほ銀行に口座を持っていたら、おそらくそうしたであろう。みずほ銀行側も上得意である東京都職員の給与を確実に振替する為、優遇措置を講じ他のシステムに負荷をかけたそうだから、あまり一般顧客の事は考えていないと言えるのかもしれない。これらの事実は金融庁も認めている公認情報である。

----------------------------------------------------------------------

 今月二十五日は給料日が集中する日である。会社によっては給料振込口座を急遽みずほ銀行以外に指定するよう社員に指示しているそうである。その数数十万件に及ぶと言う情報もある。多少の振込み手数料がかかっても、トラブルが多発する会社に大事な社員の給料は託せないと言った所であろうか、日本一の銀行がこけた事によってか、日本の国債の格づけもワンランク低下した。四月三十日にはゴールデンウイーク前にお金を下ろす人が多数発生する為、一年で一番口座振替が発生する日である。四月一日に三百万件の振替でダウンしてしまったシステムが果たして持つのだろうか、現時点での予想では九百万件程度の振替が発生する可能性があるのだと言う。更なるトラブルの可能性を懸念する人の声は日増しに大きくなるばかりである。

 今回は何だかお堅い話となりました。

 実際にドコモから振替が出来ず、督促状が来た人も居るとか居ないとか、実際の被害はどうなるのか想像もつきません。私は個人的に銀行関連の小説などを読むのが好きで、横田さんの”はみだし銀行マンシリーズ”や高杉良さんの”金融腐食列島”など新刊は必ず読むようにしています。読むたびに「銀行って変な所だなあ」と思ってしまいます。今回のコラムを読んでもっと知りたいなと思う方は、週間ポストの特集記事や、週間文春の特集記事などなどをよんでみると良いかもしれません。
  
 さて、次回は……何にしましょうか。
 まだ決めていないのですが。
 ではまた
 
 

ライン