ライン




水曜日はレディース・デイ

 引っ越してきた当時は何も無いタダの田舎だったのだけれど、あれよあれよと平成不況も何のその、近所にお洒落なアウトレットモールが出来、大型ショッピングモールが出来、そして歩いて十分程の距離に映画館が出来た。ありがたい。

「ママ!映画に行こう!」
「そうだね、今日は水曜日だから行こうか」

 水曜日はレディース・デイとなっており、女性は誰でも映画鑑賞を千円で出来るのである。これは安い。今日もまたお昼を食べた後、娘を自転車の籠に乗せ一路映画館のあるデパートへ向かう。途中で偶然にも近所のママさん友達に遭遇した。

「映画ですか? もう少しで始まる時間ですよね」
「そうそう。急がないと」

 どうやら目的は同じらしい。これが後々に大きな問題となる事を全く想像せず、慌しく自転車を止め息を切らせ勢い良く映画館へと走り込んだ。

「すいませーん。大人一人お願いします」
「お連れ様も一緒ですか? でしたら一緒に購入されないと、お近くの席になりませんよ」
「じゃ、二人でお願いします」

 二人ともぴっと当たり前の様に千円札を一枚づつ取り出す。消費税は内税なのである。子供達の方はと言うと、思いがけず一緒に映画を見るようになり嬉しそうである。荒れた呼吸を整えながらニッコリチケットを受け取ろうとしたその時、事件は起きた。

「みきちゃん。何歳になった? 僕昨日四歳になったんだ」
「みきね、みきはまだ三歳なんだ」
「おっきーケーキ食べたんだ。いいでしょ」

 それをここで言ってはいけない!!!

 チケット売り場の外には集音マイクが付いており、小さな声でも販売のお姉さんに筒抜けなのである。今までは二歳だと言い張り、子供の料金は一切支払っていなかったのである。それはママさん友達も一緒らしい。

「四歳でしたら子供料金かかりますけど」
「え、あの内はまだ三歳なんですけど。今月末です四歳になるのは」
「無料は二歳までです。千八百円になります」
「あの……膝の上でいいんですけど……」
「同じ事です」

 言い訳空しく、結局払うしか他は無く大人の平日料金と同じだけの料金を支払い映画館の中へ。映画の内容は楽しかったけれど、暫らく映画館に行くのはやめにしよう。と思う今日この頃なのでした。

「駄目だよ……ママ泣いちゃうよ」

[完] 

ライン