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女流作家の生きる道

 いつかはプロの作家になって、印税生活をしてみたい!と思う人の数は決して少なく無いと思う。しかし皆”作家”になる事に夢中で、その後の生活まで考えている人の数は少ないと思う。
 本を一冊出した位では作家業では食べていけない。これは一般的な常識として蔓延しているようであるが、女性である場合、旦那の収入を当てにする事も出来るので、専業で作家業に勤しむ事も可能である。では実際の女流作家の方々はどうやって生活しているのだろうか?
 まず小説・エッセイ共に絶好調の林真理子先生の場合は旦那さんは普通のサラリーマンである。金銭感覚も通常人のままで、エッセイの中では三千五百円の河豚を食べ、奥さんに「悪かったなあ」と謝るシーンが描かれているのを見たことがある。林真理子は五万円の河豚を美味い。美味いと食べて喜んでいるのにである。作家は作家、サラリーマンはサラリーマンと割り切って生活しているこの姿は他人が見ていても非常に好感が持て、何年もこうした生活が継続していると言う話を聞くと、やはり理想ではないのかなと思う。

 奥さんが売れるまでは支えるけれど、その後は働き手として入れ替わり家庭に入るという旦那さんも少なくない。昨年ブレイクした田口ランディさんの旦那さんなどがそれにあたる。奥さんとしては家計を背負って執筆を続けるのだから大変である。実際田口ランディさんは昨年年十二冊もの本を執筆した。仕事にこうして集中していく姿は潔くもあるのだが、リスクも大きく実際に実行に移すにはかなり難しい様に思う。

 借金女王としても有名な中村うさぎさんの家庭も旦那さんが家事を担当している家庭ではあるが、エッセイの中で旦那さんが「お金なくなっちゃったんだけど・・・」と言うと「分かった。じゃアコム行ってくるよ」と仕方なく出かける中村うさぎの姿が寂しそうに描かれている。ブランド物ばかり買いあさる中村うさぎが悪いのかもしれないが、こうした家庭事情を聞くと、女性作家として一人で食べていくのは大変な事では無いのかなと思う。

 おそらく日本の女流作家の中で一番の賢女と言えば、やはり橋田すがこ先生では無いかと思う。橋田先生の家庭も前述の林真理子と同じく、旦那さんはサラリーマンであったそうだ。現在は亡くなっているが、旦那さんが生きている間は収入が少なくても常に旦那さんを立て、残り物などは一切食卓に並べることはしなかったそうだ。

「お陰で私が太ってしまったのよ!」

 と笑う先生の顔は明るい。橋田先生の考え方はこうだ。たとえ額は少なくても旦那さんは常に一定額の金額を家庭に入れてくれる。これが不定期収入の人間としてはどれだけありがたい事か。いざとなったら辞められる。書きたいことが書ける。これは全て旦那様のお陰。と
 正直何と素晴らしい考え方であるかなと思った。最後に橋田先生は

「でも、私は全部自分の実力だと思っていましたけどね」

 と悪戯っぽく呟く事も忘れない。上記を踏まえた上、もし私が作家になったとしたらどうするであろうか。それは。以下はその時の旦那との会話である。

「我が家は林真理子型で行きます。会社はやめさせません」
「いやだ。俺はさっさと会社を辞める。希望は田口ランディで、最悪は橋田すがこだ!」
「そうはいきません。あなたは三千五百円の河豚で、私は五万円の河豚を食べます!」
「そうはいくものか!」
「橋田先生のような、そんな神様みたいな事が出来るわけないでしょう!」
「そんな事ばかり言っていると、俺がソフトで当てた時何も買ってやらんぞ!」
「その時は逆中村ウサギでお願いします」

 理想論は云々として。
 あなたがもし作家になったとしたら、何型の生活を望みますか?
 ちょっと考えてみると楽しいかもしれませんよ


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