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メールマガジン広告の謎

 小泉内閣メールマガジンが創刊され、流行語大賞には残念ながら選ばれなかったけれど、今年は”メールマガジン”と言う言葉が日本全体に知れ渡った年では無かったかと思う。発行スタンドと呼ばれるメールマガジン配信サイトも数多く公開され、読者数は何万という単位で登録されている。人が集まれば商売が始まる。そんな中、それら個人発行のメールマガジンに広告を掲載するというビジネスが約三年程前から生まれた。

 最初はメールマガジン配信部数あたり課金するという部数課金システムだけであったのが、次第にその広告を見てホームページを訪れた人の数に課金するという”クリックカウント”という方式が導入された。広告を依頼するクライアントとしては、目に結果が見えた方がお金を払いやすい。かくしてメールマガジン広告代理店は雲霞の如く増え、利益を貪った。クライアントからは一クリック百二十円から百五十円程度で仕事を請け負い、メールマガジン作者には三十円から五十円程度しか支払わないのである。場合によっては金額が安いため、支払い限界金額を決めている広告代理店などでは、広告は掲載したけれど、結局一円も払わない、と言った事が頻繁に発生した。

 この一クリックあたりいくら、というシステムも有る意味非常に不明瞭であり、プロバイダなどに接続した際に割り振られるIPアドレスを使って、重複クリック、俗に言う”不正クリック”を淘汰使用としたようなのだが、これもプロクシ・サーバーなどを使用してIPだけを変更し、クリック数を上げると言った事が頻繁に行われた。
 規約を守っているのだから、例え不正クリックであっても支払うべきであろう、と思われたが広告代理店はそうした不正に対しては”解約=お金は一切支払わない”という方策で対応し、強い広告代理店、弱い発行者という図式が生まれて行った。

 クリック広告に対して奏功している内にクリック広告に対して、アフェリエイト広告と言う物が生まれ、それに対応した広告代理店も生まれて行った。アフェリエイト広告とは成果報酬広告とも呼ばれ、掲載した広告を見て、契約まで成立した場合にのみ課金すると言うシステムである。勿論クライアントは成果につながるから大喜びであるが、大体千通メールマガジンを発行して、クリックされるのは最大で十人、通常で有れば五人も行かない程度である。この数字を越えると広告代理店に”不正クリック”の汚名を追わされ解約されてしまう。アフェリエイト広告の場合は比率的にこの下を大きく下回り一人居るか居ないかという状態であった。これは発行者はタマラナイ。しかも例え契約が結ばれたとしても(アンケートに回答した、商品を申し込んだ)クライアント側に”やはりキャンセルされたので支払いは出来ません”と言われたらお金は支払われないのである。広告代理店はウハウハの時代。地方で運営を行っていた広告代理店は次第に首都圏に集まり、オフィスを構えるように成ってくるのだが、それを実際にメールマガジンを発行している発行スタンドがいつまでも許す訳では無かった。

 本年中旬程に発行スタンド側も広告を掲載したマガジンに対しては、広告代理店に対して課金を行うことを発表した。課金を支払っていない、パートナー契約を結んでいない広告代理店の広告URLについては、"*"表示し、無効化するようにしたのである。課金金額は一部0.04円と非常に安いのに対し、広告代理店は徐々にメールマガジン広告から撤退を続けていた。ある広告代理店は自分で発行スタンドを経営し、ある広告代理店はオプトイン広告と呼ばれる、読者に自分の性別や属性など、興味のある分野を登録して貰い、それに対して企業の広告を募ると言った新しい”メールマガジン”を提案して行くようになった。

 メールマガジン広告を得るためだけにメールマガジンを発行していた人にとっては、大変な問題である。毎日英単語を一つだけ配信し、収入を得ていた人やマルチまがいの商売に手を染め、月に三百万円近い収入を得ていた発行者もこの広告代理店撤退の煽りを大きく受けている。メールマガジンが質の時代に入った、と雑誌や書籍と連動してインターネットのバーチャルな世界から現実の世界に新しい文学を提供するサイトも増えてきた。今年はメールマガジンが一般的に広がった年であり、来年はより質の高いマガジンが生まれる年で有って欲しいと思う。


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