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書評 2001/12

 今週はもう定番と成ってきました書評をお送り致します。映画ハリーポッターと賢者の石が公開され、何やら中世めいた小説がブームの兆しであります。今週はそうした”中世”を一つのテーマとしてお送りしたいと思います。どうぞお楽しみに

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本当は恐ろしいグリム童話 桐生操 ISBN4-584-39119-X KKベストセラーズ

 一九九八年に発行された同名の本の単行本版である。当時この作品が公開された折りはかなり内容室共に話題に上り、類似の”本当は***”といった本が多く発行され、この本よりも値段が安かった為(最初から単行本で発行されていた)かなりの数買って読んでみたが、やはり本家は内容がひと味もふた味も違う。
 昨年ディズニーで復活された白雪姫やシンデレラ、眠り姫など定番の童話が元々どういった形の話であったのか、想像することも出来ない形で描かれている。
 やはり元々は教訓的な意味合いがあり、恐怖の対象であった物語がいつしか形を変え、我々の生活の中に入り込んで行った。その原点とも言える話である。

 ご存じの方もいらっしゃるとは思うが、桐生操とは親子二人のペンネームであり、両者ともフランスソルボンヌ大学に学んだ才女である。彼女たちの書く作品に駄作は無いが、特にこの作品は”代表作”とも言える集大成とも言える作品である。いつもと違う話を読んでみたい。新しい世界を見つけてみたいと思っている人にオススメである。

 追記として、この作品が刊行された後、書店の女性雑誌のコーナーに”本当は怖い***”といったぶ厚い雑誌が多数発行されるようになった。
「ついに漫画にまでなったか・・・」と感慨深く手に取ると、何とビックリ。レディースコミックであった。書店にて間違って漫画の方のこの本を見つけたとしても手に取らないことをオススメ致します。結構ビックリ。どぎつかったです。

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ハリーポッターと賢者の石 J.K.ローリング ISBN4-915512-37-1

 映画を見てから本を読むか、本を読んでから映画を見るか、人によってポリシーなどにより意見が違うとは思うが、選ぶとすれば、筆者は映画を見てから本を読むタイプである。

 父母に先立たれ、母の妹夫婦に育てられる事になった魔法使いハリーの物語である。作者J.K.ローリングのデビュー作であり、全世界四十七ヶ国以上で読まれている大ロングセラー小説。全編は七冊となる予定であり、現在日本では三冊、欧米では四冊発行されている。

 各国に合わせて表紙の絵は変更されているものの、中身に挿し絵は一つも入ってはいない。しかし描写その他が丁寧に描かれているため特に読み進むのに意味が分からなくて困ると言った事は無かった。数こそ四百五十五ページに及ぶが、筆者自身は休みも取らず一気に読み終えてしまった。
 内容的には映画とさほど変わらないが、映画を見終わった後で感じた疑問点や心配事が本を読むことによってかなり解消された様な気がする。ちょっと現れた端役にも重要な意味がある。映画を見た後で本を読むと、何だか隠された秘密を知ったような気がして、とても得した気分になってしまった。

 値段的には単行本が出されていないため、一冊千九百円と非常に高いが、十分に価値があるかと思う。早く続きを読んでみたい。

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 11月にヤングブラッドhttp://www.youngblood.jp/という映画が公開さた。ご覧になられた方も居ると思いますが、これは日本では”三銃士”と呼ばれている話の映画版である。三銃士、この話を知らない日本人は少ないのでは無いだろうか。
 
 しかし、実際にこの”三銃士”という話はA.デュマの”ダルタニアン物語”の二冊に過ぎ無い事を知っている人は非常に少ないと思う。
 何とあの”三銃士”の話には続編が存在したのである。映画の公開及び復刊の声が高かった事もあり、この度この”ダルタニアン物語”が、復刊ドットコムhttp://www.fukkan.com/において、読者投票の結果復刊される事が決定した。筆者もつい先日、念願叶ってようやく全十一冊を手に入れる事が出来た。嬉しい。

 ”ダルタニアン物語”はA.デュマの執筆時期や内容によって分類すると、3つに大きく分類する事が出来る。今回残3回については、古典文学の最高峰とも言えるこの”ダルタニアン物語”についてご紹介したいと思う。是非共に、昔読んだであろう古典文芸を思い出して頂ければ幸いである。

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ダルタニアン物語 A.デュマ ISBN4-8354-4004-8

三銃士

友を選ばば三銃士
妖婦ミレディの秘密

 日本で一般的に知られている”三銃士”と話は、ダルタニアン物語は全十一冊、この内のたった二冊でしか無い。
 私自身三銃士の話は大好きで、何度も何度も読み返した内容であるので、この二冊については、内容を知っている為、どうしても読み流したい気分にさせられて、しまったのですが、じっくりと読んでいくと昔読んだ頃に見えなかった作者”A.デュマ”の見えざる手が見えて来る。
 ダルタニアンが実在の人物であったというのは始めて知った事であるし、A.デュマに共著の人間(歴史家がプロット作りに参加していた)が居たことも始めて知った。アトスの名前の由来なども事細かに書かれており、”友を選ばば三銃士”の巻は基礎知識の検証を行っている部分であると言っても良いと思う。

 内容的には、ダルタニアンが始めて三銃士と出会い、成長していく姿がのびのびと描かれており、読みやすいと言えば一番読みやすい部分であると言える。妖婦ミレディについても原作に忠実に描かれており、映画のように全てを受け入れ、大人しく死を選ぶといった事は無い。”妖婦”の名に恥じないミレディの姿。これぞ正しい人間の姿であるのかもしれない。

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ダルタニアン物語 A.デュマ ISBN4-8354-4006-4

二十年後
 
我は王軍、友は叛軍
謎の修行僧
復讐鬼

 三銃士が描かれた後、更に追加で二十年後を想定して描かれた部分です。

 ここから先の部分は殆ど日本では公開されていない部分となります。二十年後と題されたこの部分はダルタニアンが壮年になり、銃士隊の副隊長となった所から話は始まる。勅命を受けかつての友三銃士を探すダルタニアン。しかし快諾してくれたのはポルトスだけであった・・・

 ダルタニアン・ポルトス vs アトス・アラミスと分かれて戦うかにも思えるが、やはり男の友情。いついかなる時も友として戦い抜く事を誓い合う姿は涙を誘う。アトスの息子”プラジュロンヌ子爵”こと”ラウル”が登場するのもこの章である。どちらかというと平均年齢が高くなってしまったこの話を、若い魅力で盛り上げてくれる。

 どちらかと言うとダルタニアンはあまり良いところが無く、アトスやラウルが話をより盛り上げ楽しませてくれる。アトスファンには必見の章である。

 そして何とあの”ミレディ”に息子が居たという事実が明らかになる。執拗に三銃士を追う”ミレディ”の息子”モードント”。彼は母の敵を討つことが出来たのか、それは読んでみなくては知ることは出来ない。

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ダルタニアン物語 A.デュマ ISBN4-8354-4009-9

プラジュロンヌ子爵

将軍と二つの影
ノートルダムの居酒屋
華麗なる饗宴
三つの恋の物語
鉄仮面
剣よ、さらば

 二十年後、から更に十年後経った話である。ダルタニアンはついに”隊長”に昇進するが、この章はむしろ”フランス宮廷の恋愛集”的な印象の強い章である。国王と恋人を取り合うラウルに陰謀に立ち向かうダルタニアン。その姿はかつての若い無鉄砲な印象では無い。元帥の風格である。

 この章では、かつてレオナルド・ディカプリオ主演の映画の原案にもなった”鉄仮面”も描かれている。

 最終冊”剣よ、さらば”ではついにかつての英雄”ポルトス”が非業の死を遂げてしまい、アトス・ラウルもそれに続く。失望に暮れるダルタニアンも最前線において戦死を遂げる事と成ってしまう。
 ”ダルタニアン物語”は主人公の死により、本当の最終話となってしまうのだが、読後感は決して悪くない。何か一つの大きな仕事をやり遂げたような、ダルタニアンの満足感が伝わって来るような気がした。

 三章の内では一番人間臭く、恋愛話なども多数あるので、読みやすいとも言えるかも知れないが、量はとにかく膨大である。時間があり上質のフランスの宮廷物語を読んでみたいなと思う人にはオススメである。

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 ダルタニアン物語。完全読破するのにかなりの時間がかかりました。対象は小学生高学年からとなっていますが、やはりこれは大人の男性の方に時間をかけて読んで頂けたら良いのでは無いかと思う。

 自分の中に描いてきた”三銃士”が一体どのような人生を歩み、消えて行ったのか。

 これら十一冊の全集は、我々が抱いていたそういった”疑問”を解消させ、満たしてくれます。しかし古典である為、重量はかなりあります。
 二段組みで大体一冊300ページ前後。一冊あたりハリーポッターの二冊分程度の分量があります。
 最初に全冊買うのでは無く、まず試しに一冊読んでみて、違和感無く読めるようであれば、続きを買ってみるという方法を取っても良いかもしれません。

 オススメとしては昔三銃士を熟読した人間には続編である”我は王軍・共は叛軍”、
 ミレディの息子の結末について知りたい人は”復讐鬼”
 アトスの息子ラウルとルイ十四世の恋のやりとりに興味がある人は”三つの恋の物語”
 そしてどうしてもラストだけ知りたい。三銃士がどういう最後を遂げたのかだけは知りたいという人には最終冊”剣よ、さらば”

 がオススメであると思います。

 是非この年末お試し頂ければ幸いです。私も年末時間が出来たら、もう一度読み返してみたいと思っています。

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 さて、FortuneClipも本日の発行をもって、年内の発行を終了させて頂きます。
 今年もご購読頂きありがとうございました。
 来年は1/8からの発行再開となります。来年もまた宜しくお願い致します。

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