炭疽菌〜白い粉の正体とは 現在アメリカにおいて、郵便物に炭疽菌の白い粉を混入させ、感染させるという恐ろしいテロ行為が横行している。狂牛病についで出てきた新しいこの”炭疽菌”とう言葉。今回はこれについて考えて行きたい。 筆者が初めて炭疽菌という言葉を聞いたのは小学生5年生程の頃であろうか、野口英世(1876-1929)の伝記を読んでいたときにぽっとこの単語が出てきて、あまりの不思議な名前に頭を傾げてしまったのを今でも良く覚えている。 「何だこれ???」 記憶が薄れた今となって、その記憶が正しかったのかどうか調べてみても現在の野口英世の伝記にはそういった炭疽菌に関する詳細な記載は見つける事が出来なかった。 炭疽菌の分離は、1876年にコッホ(1843-1910)が行っており、初期研究成果は彼によって殆ど行われている。コッホの伝記を垣間見ると、コッホは日本の高名な生物学者北里教授と交流があったと言うから、北里教授にも師事した事がある野口英世が炭疽菌研究に全く無関係でだったとは思い難い。そう考えて行くと、私の幼い頃の記憶は、全くの記憶違いとは言い難いと思う。しかし現時点では確証も無い。 炭疽菌参考Web 細菌学を作った人々 http://tag.ahs.kitasato-u.ac.jp/kitasa-2/REKISI.HTM 中東であったこんな話 http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_h/h07.html 炭疽 http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_i/i04-11.html 郵便局・炭疽菌情報 http://www.post.yusei.go.jp/ 炭疽菌はアロイ・ポランダーという学者の手により1849年に発見された病気である。 元々は家畜などが感染する病気であり、通常炭疽菌に汚染した家畜に人間が触る事により汚染が広がる。現在治療法としては抗生物質を使うことが一般的であるようである。 炭疽菌は決して珍しい物ではなく、数十年で日本でも数百人単位で大発生した経緯がある。詳細はこうである。ある村で牛が連続で不思議な死に方をした。それを見た獣医は 「深く穴を掘り、牛を埋めて下さい。そして、絶対に死んだ牛を食べないで下さい」 獣医師は何度も何度も念を押して村を去ったと言う。 病死した牛を食べる。現代においてはこんな事は全く考えられない事であるかもしれないが、この村においては死んでしまった牛を食べるのは何にも優る”ごちそう”であり、古くからの風習として残っていたのだという。かくして掘り出された牛の肉を食べた数百人単位の村人が汚染され、政府によって村は閉鎖されるという大事件が発生した。 その当時、炭疽菌治療法はまだ確立されていなかった。 家畜の炭疽菌用のワクチンを使用したり、様々な種類の抗生物質を使用したりと、担当した医師は無我夢中。必死で治療に没頭したのだという。結果、偶然に一種類の抗生物質が炭疽菌に有効である事が判明し、幸い、汚染された数百人の村人は一人の死亡者を出すことなく無事全員完治したのだという。 「あんなもの、薬飲んで大人しうしとったらすぐ直るけん。大騒ぎする事じゃなか」 今回の炭疽菌騒ぎを受けて、テレビ局がその村を取材していた際に出た一言である。 あまりにもあっけらかんとした村人の対応に見ている方が拍子抜けしてしまった。本人達は重大事件という認識が無いのである。 しかし現在アメリカで大騒ぎになっている炭疽菌はこうした土着に発生した炭疽菌とは違い、バイオテロ用に強化されたものであり、”吸い込むだけで”感染し、死に至るという恐ろしい物である。こうした過去の感染経緯などあまり参考にならないのかもしれない。 炭疽菌の潜伏期間は1-7日。基本的に種類は皮膚炭疽、腸炭疽、肺炭疽の3種類に分類される。現在テロで使用されたのは一番最後の”肺炭疽”である。 感染した場合は、軽度な発熱、疲労感、倦怠感が数日続き、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、そして胸部の軽度の疼痛が発生し、重症では、突然の呼吸困難、チアノーゼ、昏睡を伴う失見当識を起こしてしまう。対処方法としては、ペニシリンなどの抗生物質を感染初期に大量する事が有効であるとされている。 皮膚炭疽の場合は80%の確率で10日程度で完治すると言われるが、肺炭疽の場合は24時間以内にほぼ死亡するとされている。恐ろしい。しかし人から人への感染報告は無いと言うから、ミッションインポシブル2に出てきた人間間汚染型のウイルス”キメラ”のような被害はあり得ない様である。とりあえず一安心。ではないのだけれど さて、今回の事件の犯人は誰なのだろうか。 普通の人間が一番最初に考えられるのは現在一番ホットなオサマ・ビン・ラディン氏、(ロシアから40万円で買ったという噂も流れましたが)又はイラクのフセインであろうが、現在炭疽菌の分子構造や炭疽菌が同封されていた人物の筆跡などから、アメリカ国内の過激派の仕業という見方が有力になってきている。 日本の郵便局においても、炭疽菌についての告知が為され、不審物に対しては処置を行っていく予定であると行くという告知が出入り口付近の掲示板に張られていた。通りがかりの郵便局のお兄さんに話を聞くも、郵便局内部では、あまり表立っての動きは無いとの話であった。これで万が一日本の郵便局に炭疽菌の混じった郵便物が到着したらどうなるのであろうか、恐ろしい事である。 実際の被害国、アメリカでは郵便物に紫外線を当て、炭疽菌を無害化する郵便局に導入されたそうである。しかしそこまでしても、ハリウッドにおいては、炭疽菌騒動が収まるまで、ファンレターは全て開封せず、送り主に送り返す予定であるという。ファンにとっては悲しい話であるが、今はそうせざるを得ないスターの立場も考えるべきであるかもしれない。 白い粉の恐怖。あなたはどこまで知っていましたか? |