本を書こう。他では聞けないプロ達のマル秘ノウハウ
〜いつか出すぞベストセラー

全10回

1.自己紹介

 はじめまして。池田智子と申します。ハンドル名は池田@ママを使ったり、ふとっちょペンギンを使っておりますが、こちらでは池田@ママを名乗らせていただければ幸いです。

 本職はSOHOであり、在宅でシステム開発等々を請け負って生計を立てております。某大手アパレルメーカーのシュミレーションシステムやMHTML形式のメールマガジン発行システム。最近はインディーズ専門書店★ペンギンBooksの開発を行ないました。

 守秘義務は無いのか? ペンギンBooksを開発したのは自分だと公言しても良いのか? とおっしゃられる方いらっしゃると思いますが、こちらの運営者は私でありまして、運営を開始しましてそろそろ半年になりますが、来月には法人化予定です。自費出版等々興味のある方は是非一度遊びに来て「この人、大人しく開発業をしていた方が儲かるんだろうに」とクスクス笑って頂ければ幸いです。

 現在私は目指せプロ作家! の看板を空高く立てて日々執筆に明け暮れております。一冊目の壁は昨年初エッセイ集「可愛い赤ちゃんの作り方」をまぐまぐ文庫より出版致しました。こちらは応募者数六百人と言う難関を突破し実現しました。現在はパソコン系の入門書が二冊(年末出版との事ですが、どうなる事やら)現在ビーズのデザイン本執筆をしていますが、こちらは紙ではなく、まず電子出版という事になると思います。

 その他ありがたい事にミニコミ誌等々では現在連載を行なっています。ささやかながら私もここまで成長するのには大分の苦労がありました。今回の連載でそれらを紹介する事によりもし皆様の一冊の壁を突破する機会になれば幸いに思います。連載回数は十回。長いようで短い期間ですが、どうぞ皆様宜しくお願い致します。

参考URL
インディーズ専門書店 ペンギンBooks
http://www.penguin-books.net/
*自費出版を考えている方はお気軽に
ペンギンBooksプレスリリース(ベンチャーナウ掲載)
http://www.venturenow.tv/venturenews/vn20031117-05d.html
*作ったものが記事になると非常に嬉しい。
MHTMLメールマガジン配信サイト(廃止)
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0404/mhtml.htm
*同じような物作ってみたい人は相談に応じます。

2.メールマガジン〜子育て系メールマガジン歴6年

 文章を書く事は小学校の頃から好きでしたが、集中して書き始めたのはおそらく今から六年前。第一子を出産したから。と言うのが一番であったと思います。丁度メールマガジン配信サイト「まぐまぐ」が話題に上っていた事もあり、何気なく子育て日記の連載を始め何を勘違いしたのか、現在に至るまで続けています。読者数は最大で五千人に達しましたが、現在は二千人程のこじんまりとしたメールマガジンを経営しています。

 このメールマガジンを続けて居たからこそ、一冊目の壁突破に繋がった事は間違い無いと思いますが、現在はメールマガジン自体が跳梁跋扈しており、創刊したからと言って即出版と言う話はまずありません。ただ文章鍛錬としては「定期的に書く」と言う習慣は必須であるので、そう言った意味では非常に有意義であると思います。

 メールマガジンの発行回数は減りましたが、その分は日々日記(blog)を書き文章鍛錬としていますが、とにかく「人に見られる」と言うえも知れぬ快感は確実に文章力を上達させ、壁を越える大きな手助けになって行きます。

「最近メルマガの発行数減ってません?」
「まあまあ。そう言う時は日記の方読んでくださいよ」

 読者の数が何故半分以下に減ったのか。それはメールマガジン配信サイトがこの六年の間にドカドカ潰れていったからに他ならない。苦労して読者を集めても大本のサイトが潰れれば元の木阿弥。移動を促してもまず読者が依頼先に移動する事はまずありません。

「はーい。こちらの配信サイトに移動して下さい!」
「……。一々移動するのメンドクサイ……」

数年が経過

「池田さんはまだメルマガやってるんですか?」→と言うメールが届く
「やってます! で、あんたは何の用?」
「二人目生まれてさ、今どうしてるかと思っただけー」

 読者を創刊後増やすコツとしては定期的に、本気で増やすのであれば週二回は発行し各ジャンルページの一枚目に常に表示されるよう努力する事。新しいメールマガジンサイトがあればできるだけ速いうちに登録しておくと効果が高い事が言える。また「オススメ・メールマガジン」に選ばれるとこれまた読者増が望めるので、メールマガジン紹介文や題に「オススメ・メールマガジン」のジャンル名などを入れておくと採用率が高い。

 お金がある人は「メールマガジン読者」を有料で集めてくれるサービスを利用すると良い。大体一件十四円、一万件単位で「購読を了承した」良質なメールアドレスを収集してくれる。そこまでお金がかけられない人は「メールマガジン創刊記念」とホームページでメールマガジン購読を条件とした懸賞を行なうと効果がある。

 無論懸賞情報を各情報サイトに登録する手間はあるけれど、メールマガジンの読者を本気で増やして見たい人は駄目元で試してみると面白いと思う。しかし、

「懸賞の発表が終ったぞ! さてもうメルマガは解除してしまおう!」

 という人も結構多いので、懸賞をした際当選発表は「当選者のみに連絡」の方が解除率が下がり効果的です。

 余談としてメルマガの読者に一番喜ばれたのは育児日記の主人公達の年賀状でありました。メルマガのニーズとジャンルにあった懸賞を選ぶと言うのも固定の読者を増やすもう一つのコツではあるようです。

池田@ママ★メルマガ「可愛い天使の作り方」
http://members.jcom.home.ne.jp/angel-miki/
*総発行数は278です。固定客相手の地道な活動です。

池田@ママの裏でコソコソ日記
http://penguin.oops.jp/mama/index.html
*楽天広場を追い出され、こちらにて営業中

メールマガジン読者を有料で集めてくれるサービス
http://www.prjapan.co.jp/
*別にアヤシイ会社では無く、普通の株式会社が行なうサービスです

chance it!
http://www.chance.com/
*懸賞情報投稿は一番効果がありました。

3.企業向けメールマガジン

 自分のメールマガジンを発行するだけでは物足りず、私はその欲求を徐々に企業関連のメールマガジンにも向けて行くようになった。今考えると相当大胆だが、百万人単位のフリーメールアドレスを配布するサイトで連載小説を書いたり、中国ビジネス関連のエッセイを連載したり。数々のコンペを突破し、この時期執筆量も大分増えてきた。

 露出が増えると言う事はそれだけ影が出来ると言うこともあり、中傷メールも大分受け取るようになって来た。企業向けメールマガジンの執筆者募集と言うのは、安いのさえ我慢すれば探して見ると結構インターネット上に存在する。ネットショップを運営しながらメールマガジンを発行すると言うのはかなりの手間な上にやはり読者を引きつける文章を書くにはある程度の技術がいるからである。

 書籍を執筆する前に、こうした企業向けメールマガジンの執筆をしてみるのも一つの手だと思う。運がよければ読者数の多さに物を言わせて固定読者を掴む事もできるし、場合によっては企業のほうから出版の話を持ち込んでくれる事もある。(実現しませんでしたが)

 とは言え簡単に始められる分、簡単に捨てられてしまうのが企業向けメールマガジン。現在私はペンギンBooksの公認メールマガジン以外、固定のメールマガジンの執筆は行なっていない。

4.投稿開始〜現在投稿数131回

 のったりと始めたメールマガジン。その時は書籍化などは全く考えていなかった。

 しかしあるメールマガジン配信サイトにてオーディションがあり、採用されれば書籍化という記事が眼前を踊った。連戦連勝、まず落ちる事は無いと思って居たけれど、結果は惨敗。呆然としながらも理由を色々と考えたが、結局の所メールマガジンを書く技術と書籍を書く技術は違うのだ。

「池田さんの作品は完結していないみたいだから、次のチャンスに」
 
 メールマガジンは連載が基本なので、話を終結させる必要が殆ど無い。そして長期間の連載であればある程初期と後期では書き口が違い、大概の場合、書籍化の際書き直しが必要となって来る。

「内容は面白いですよ。でも書き直さないと駄目ですよね」

 その当時、四百ページを優に超える原稿を書き直す勇気を私は持てなかった。

 それよりもなによりも。原稿に手を入れられ、あまつさえ長年使い込んだ「題名」を変えられる事など考えもつかなかったのだ。売れる本を作る為、今思えば当り前の事なのだけれど、その時はそれが理解できなかった。

 最初のオーディション墜落後、私は心を入れ替えバーチャルな世界から現実の世界へ一人こぎ始めた。一冊目の本が出るまでその投稿数はついに百三十一を数えた。群像、文学界、太宰……それは大手の文学賞のみならず、小さなネット上の文学賞にも手が及んだ。

 自分の賞歴を見ていると見事に「没」の赤い文字が並ぶ。この時期の愛読書は公募ガイドだったけれど、最近は何月にどの賞の締め切りがあり……といった事は既に頭に入っており購入は殆どしていない。

 最初はとにかく数を送っていたのが、徐々に賞を絞り送って行くようになるのだけれど、やはり私が強かったのは、やはり「バーチャル」な世界の賞であった。今は無きメルマ文学賞ではファイナリストにも選ばれ、続くまぐまぐ文庫ではついに「出版」の栄冠を獲得した。

 投稿は数すれば良いと言うものでは無いのかも知れないけれど、一つのきっかけを求めるには良いと思う。私は今もまた年何本かの投稿は自分の中に義務づけ、執筆に日々励んでいる。

ネット出版局ゴザンス
http://www.gozans.com/
*現在オーディションは定期的に行なわれています。最初の墜落はこちらで。

池田@ママ賞歴
http://members.jcom.home.ne.jp/angel-miki/mamastory/shoreki.htm
*一冊が出るまできっちり二年以上かかりました。

ペンギンBooks季刊誌原稿募集
http://www.penguin-books.net/pBook.htm
*現在季刊誌の原稿を募集しています。是非ご参加をお待ちしています。

5.協力出版の謎を追え!

 原稿を投稿している過程で気になったのは俗に

「協力出版」
「共同出版」

 と呼ばれる賞である。最初は何も知らずに投稿したが、投稿した翌月には「準佳作」などを貰い百万円近い見積書が送られてきたのには驚いた。書類の次は電話攻勢で、三十枚程しかない原稿を倍以上に増やして書籍化しようという話には「受賞した!」と少々浮ついている私の耳にも妖しげに響いた。

 つまりは初期費用を作者が負担して書籍を出版しようと言う話なのだけれど、五百冊作るのに百万円? 一冊二千円程になるのだろうか? しかし定価は千二百円程度になり、印税は重版から支払われるという。素人の私が出してそんなに売れるのだろうか? と言うと図書館を中心に売り捌いていくと担当者は胸を張っていた。無論そのようなお金があろう筈も無く。丁重に断ったのだが、何となく気になったのでもう一度その出版社に原稿を送って見るとやはり数日後に「準佳作」と言う連絡が入り、ごくごく当り前のように見積書が届けられた。

「四十ページほど書き足し合計百ページにして本にしましょう!」
「そんなお金ありません!!!」

 図書館系に売りさばいて行くという根拠はこちらの出版社で本を出すと図書流通センターの書籍に情報が載るという事らしい。日本には千五百を越える図書館が存在する。規模が小さい自費出版系出版社ではこうした所に取引は無く図書館購入のきっかけにすらならない所もあるようだ。とは言え買ってもらえるのは百冊前後という話もあるからあてにするには少々危険が伴うといえるだろう。

 おそらくはマニュアルが存在するのだろうけれど、電話の内容回答等々は二回ともほぼ同じであった。その他自費出版系と文芸系の賞の大きな違いは応募から発表までの期間が自費出版系はとにかく短く、何故か見積書が入っている事だろうか。

 百万円近くのお金を取ってぼってるんだろうな……と思う人は多いかもしれないけれど、やはり本を作ると言う事はお金がかかる事であり、ペンギンを立ち上げた後原価計算した所決して高い金額では無かった事に気がついた。勿論これは本を作る為の初期費用が、と言う事でありその後本が売れて幾らか戻ってくるかもしれない……という事は考慮に入れない金額である。何故なら自費出版本は殆ど売れないから。販路としては著者の手売りが一番になってしまうのである。

 余談として先月この私が二度の応募をした自費出版系出版社は一億七千万ほどの負債を抱えて倒産した。やはりこれは良心的な価格設定? が仇になったのだろうか。賞を企画して原稿を集め見積書と共に美辞麗句の電話攻勢をかける……そんなビジネスモデルは既にネタバレし、斜陽を迎えているのかもしれない。

協力出版を追え!
http://members.jcom.home.ne.jp/angel-miki/mamastory/backnumber56.htm
*ちょっと前に書いたコラム。アホな研究ですが役に立てば

6.本の売り込み

 誰しも一度は「無料」と言う言葉に釣られてメールマガジンをとにかく購読しまくった時期が無いだろうか? 私も情報収集含めそんな時期があった。そんな中「私はこうやって一冊目の本を出しました!」といったメールマガジンを発見した。後日縁があってその作者にも会い話を聞く事ができたのだが、簡単に素人が売り込みをする方法をこの時点で手取り足取り腰取り? 初めて教えて貰った。

1.自分が出したいジャンルの雑誌を探す
2.奥付けで出版社と担当者を探す
3.メモに控えて、電話をかけ原稿を読んでもらえるか交渉する

 現在は携帯電話にカメラがついているのでもっと簡単にできるのかもしれないけれど。一番正しいのは図書館などで探す事かもしれない。なる程。ではやってみよう。と言う事で一時期本屋に通い奥付けを控えては電話攻勢をしていた時期もあった。

「すいません。○○を読んだのですが、原稿を読んでいただけないですか?」
「はい○○宛に送って下さい」

 やってみると結構原稿を受け取ってもらえた。が、読んで貰えたかは微妙である。

 「駄目」と言う回答を貰えたのが二社でその他二十社以上は一切の返事すら無かった。こうした原稿はおそらく出版社に山積みされているのだろう。

 本を出しても殆ど儲かる事は無い。けれどその本をきっかけに雑誌連載を依頼されたり、講演を依頼されたり「その他」の部分でペイできると言う話を聞いた事がある。私の父は学者で既に十冊近い本を出して居るが、これはあくまで本業の「広告」と割り切っている。

 結果は出なかったけれど、これはこれで良い経験であった。プロの編集者が忙しい中私に書いてくれた感想、評価は厳しい物だったけれど、これは後日文章を書きつづける上で意識的にも非常に役に立ったと思う。

ボイルドエッグス
http://www.boiledeggs.com/
*原稿の掲載依頼をしてくれるエージェント。ただ高い……

しろうとでも一冊本が出せる24の方法
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396312695/ref=pd_bxgy_text_1/249-1536888-4238729
*値段も六百円と非常にお安い。持ち込む前に読むべきかも。

7.初めての一冊(まぐまぐ文庫)

 まぐまぐ文庫のオーディションに受かったのはちょうど第二子を出産時であった。出産後パソコンに触るのは一ヶ月間禁止されてしまったので、合格の通知は一ヵ月後に受け取る事となってしまった。折角貰ったチャンス。活かさなくては! 動かないのを幸いと膝の上に赤ちゃんを乗せての執筆を行なった。実際普段もそうして仕事をしているので何という事は無いが、プロのイラストレーターに表紙を書いてもらい、ついに一冊目が出た時の「あの」驚きは一生忘れないだろう。

「え? これが本?」

 ちなみにこのオーディション。応募者数は六百人を超えたという。狭き門を潜って得た栄光である。郵便でサンプルとして送られてきたその本はコピー用の上質紙に印刷されホチキスでパチンと止められ「え、ゲラ原稿の間違いじゃ?」と思ってしまう程の仕上がりであった。

「在庫切れの無い世界。これがリアルタイムパブリッシングですよ。池田さん」
「え、本気でこれを人に売る気ですか?」

 メルマガ仲間からはこの本は「ホカホカ本」と呼ばれた。目の前で印刷され温かい状態で手に入れられる。それはそれで良しとしよう。もしかしたらこれが未来本の姿なのかもしれない。しかし友人達に怒られたのは印刷具合よりも組版の悪さ。文章を詰め込もうと小さくしすぎた文字の大きさについてであった。

「本当に酷い組版だね。読み難い」
「……それ私がやったんだけどさ……すまん。やり方なんて知らなかったのさ」

 まぐまぐ文庫は、フォント指定、行数指定も作者が行なわない仕組みである。
 が、素人にそれを強制してできるものだろうか?

 何も分からない私は偶数奇数のページ割り振りだけは設定したものの、それ以上の事については頭が回らなかった。ダラダラと長い文章に不自然に空く空白。やはりこう言う事はプロに頼まないと……これは本じゃなくてただのコピーだよ……

 かくして一冊目は草々に販売が停止された。

 今は私の手元には一冊が残るだけだけれど、オンデマンド営業の際、見本として持ち歩く事もあるのだけれど、会う人見せる人に「これは酷い」と言われる見本のような本になってしまった。悲しい。そんな思いをする為に本を出したつもりは無いのに……涙に濡れた一冊目。そして二冊目もそう簡単には行かなかった。

8.二冊目の挫折

 一冊の出版から何ヶ月が経ったろう。私が投稿をはじめるきっかけとなったサイトが再びオーディションを再開した。もう私は二年前の私では無い。今度こそ本を出してやる!

 強い思いで作成した企画書を提出する。得意の子育て系のエッセイは没、ホラー系小説も没、これは困った……次は中国系、いや児童文学の小説でも出そうかしら……と思っていると、その後出版者から出された要望は私の想像を大きく超える物だった。

「今まで読んだ池田さんの話で面白かったのはノンフィンクションの人喰話です」
「カニバイズム物ですか」

 数年前、この出版社が企画した本の中で「死体の秘密」と言うコラムを書いた事があったが、その前にも手遊び的に人が人を喰いたいと思う心理について書いた事があったのだけれど、どうもそれが目に止まったらしい。

 素人が本を出す場合、完全創作よりもノンフィンクションの方が受けが良く売れやすいといった話を聞いた事がある。最終的には小説やエッセイなどを本にしたいと思っていたけれど、まずは二冊目。手堅く売れそうな本を書く事も必要だろう。そう考えた私は企画書を書き直して提出。無事企画を通す事ができた。

 世界各国に散らばる人喰い事例を自分なりの考察を入れて書く。正直内容的には「出したい本」では無かったが「書けば出す」というなら話は別である。とにかくカニバイズム本を舐めるように読み漁り、本を買う予算が無くなれば週末に国会図書館に朝から出かけ列に並んではとにかく読んでは書いて読んでは書いた。全ページ書き上げるのにかかった時間は二ヶ月。クリスマス前に出版社に送った原稿は現在も本になってはいない。

「池田さんの文章には校正が必要です。出版社で行なう場合は一ページ五百円かかります」
「え?」

 校正組み版は出版社がやってくれると思って居たのだけれど、どうもそうでは無かったらしい。ちなみに常識的にはこれは法外な金額では無いらしい。一冊全部チェックして貰うには十万円近くの費用が必要……大分悩み苦しみはしたけれど、結局私は二冊目の出版を断念する事にした。理由は幾つかあるけれど原稿を完成させるまでに浮かんだ疑念が出版を諦める一番の理由だったと思う。

「校正費用って作者が負担する物なんですか?」
「普通出版社がやる事だよ。詐欺にでもあったんじゃないの?」

 この時点で気がついたのは、出版社は依頼した原稿に対して何ら「責任」を負っていない事だろうか。例えば私の場合ソフトウエアを開発した場合ソフトウエアが例え世に出なくても対価が必ず貰える。しかし書籍の場合はそれが無い。考えてみれば契約書すら存在はしていなかったのだ。でもこれは私のケースだけが特殊な訳では無く、往々にして出版の世界は契約書無しで話が進む事が多いらしい。

 宙に浮いたノンフィンクション本はどこへ行くのか。
 それは私すら知らない。

 ただこの本に関して言えば「出れば買う」と言った読者ニーズが高いのも事実であり、いつかは形にしたいなと心の奥底では思って居る。一冊、一冊そう簡単にはいかない。悔し涙に濡れた夜。自分の力不足を強く強く痛感した。

まぐまぐBooks★ランキング一位は書籍化されます!
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000007011
*目指せグランプリ! 一日一善一クリック。どうぞ皆様愛を分けてください!
ボイルドエッグス文学賞
http://www.boiledeggs.com/belaward/entry2.html
*バーチャルの賞に強いので、こちらに二冊目の原稿は出してみました
アップルシード
http://www.appleseed.co.jp/
*こちらも出版エージェント。企画書は5000円で読んでもらえるようです

9.フランスより愛を込めて

 インディーズが安心して本を出せるサイトを作りたい。

 第二子の出産を終え時間のあった私は一人システムを組み始めた。最初は単純にSOHOの営業用として、投稿サイトを作ってみようと思ったのだけれど、出版社をパワハラで退社した人間が偶々側に居り、話はとんとん拍子で進みサイトは公開された。ISBNコードを取得するのもJANコードを取得するのも実際問題そう難しい事では無いのだ。

 一冊目に受けた自費出版本。それが「ピンクの目覚し時計」と言うフランス在住の方の本だった。何の実績も無い、株式会社でもないペンギンを選んでくれた理由は何なのか。それは出版費用の安さと、日々書いている私の運営者日記を読んで「この人なら騙さない」と思ったからだと言う。拙い文章でもやはり毎日書く事は大切なのだと痛感した。

 しかし、フランスからの出版はそう簡単な事では無かった。送金から入金までかかった時間は何と一ヶ月。何故時間がかかったのか。海外からの送金自体時間がかかる事、ネット銀行が海外送金に対応していなかった事、そして太陽神戸三井銀行がさくら銀行となり、現在は三井住友銀行になっていたからである。

「池田さん……日本までお金は届いているんだけど、支店番号が違うって」
「え、銀行名は再三変わったけど支店名は確かずっと一緒の筈だよ」

 その後銀行に問い合わせた所、銀行の統廃合により支店番号が変わって居た事が判明した。「こちらのミスです」とは言われたものの、そのまま担当者に何の費用であるのか根掘り葉掘り聞かれた。
 
 送金だけでない。その他もトラブルは続いた。表紙画像の写真をフランスから送って貰うのに一週間かかってしまったり、フランスの歌を導入歌として書き込んでいたので著作権問題等々が絡んでしまったり。完成までには三ヶ月に及ぶ日数がかかった。

 良く聞く話があります。一冊目を自費出版の形で出すべきか、出さないべきか。

 個人的な意見として、悩んでいるのなら出さない方が良いと思う。共同出版、協力出版ではなく自費出版でも多額のお金がかかる訳であるし、出版後誰しも薔薇色の世界が待っているとは限らないからだ。

 彼女の本は現在フランスの空、ジュンク堂にピンクの背表紙を燦燦と輝かせ他のメジャー本と共に並んでいる。私は近い将来彼女がメジャーデビューし、手持ちの自費出版本がプレミアム物になる事を夢見ている。

ピンクの目覚まし時計
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4902525011/ref=cs_top_wl_1_1/ref=cm_mp_wli_/249-4866002-9852353?coliid=I1VBAGUNT0JW5N&colid=XZEUHJ59FJA3
*フランスから愛を込めて。私にとっても思い出の一冊になりました。
 
10.強い思いが本になる

 本を出すと言う事は最高の自己表現だとエッセイで読んだ事があります。
 が、その「本」を出す行為自体はオリンピック並に敷居が高く、出したいという気持があってもそう簡単に形になる事はない。

 現在日本では年間四万冊近い本が「自費出版」されているそうですが、それは総数的には一般流通本と何ら数は変わらない。本を出したい人をカモにした「悪徳共同出版業者」等々言う人も居るけれど、これは「あちらは悪徳業者だけど、うちは違うよ……」といった他社を批難する事により差別化工作を行なっている業者も居ると言う事をくれぐれもお伝えしておきたい。

 オーディションに参加する。企画書を持ち込む。自費出版する。Webで公開する。メールマガジンを書く。電子書籍を公開する。インターネットが発達した現代、それぞれの分野で情報収集する事は然程難しく無いと思います。私のように全部に手を出すのも一つの経験かと思いますが、自分に一番合った形での出版を模索して見てはどうかと思う。

 電子出版の分野は今後より広がって行くと思うけれど、こちらは場所が取られない関係上自費出版本、企画出版本と同価値で並べて貰える事がある。本を出してまずは出版社の人に読んで貰おうと思って居る人は電子出版し、それをオンデマンド出版(電子出版した書籍をそのまま印刷製本してくれるサービスが存在する)し配布すると言った形も面白いと思う。「本を出す」という敷居は昔よりも確実に低くなっている。「そんなの無理だよ……」といわず是非是非挑戦して頂けたらと思う。私もまだインディーズであり、今もまた試行錯誤を続けています。

 私の連載も今回で最後となりました。

 十回の連載の間、気がつけばペンギンBooksの管理人を降りると言うトラブルもありましたが何とか最後まで打ち切られず続ける事ができ、ありがとうございました。何があっても私はこれからも書き続けると思います。もし最寄の書店で私の名前を見つけるような事がありましたら「あ! ついにベストセラー出したんだ!」と、とりあえず手にとってずずいと迷わずレジの方に足を運んでいただきますようお願い申し上げます。最後までお読みいただきありがとうございました!!!!

個人HP いけだのお家
http://hp.vector.co.jp/authors/VA014203/
*個人HPながらgoogleページランキング4。メルマガ用エディタなども公開

池田@ママの裏でコソコソ日記
http://penguin.oops.jp/mama/index.html
*連載終了後も私の文章を読みたい人は是非遊びに来て下さい。