カワセミの住む川〜境川サイクリング道路を歩こう!

 仕事場に近く、自然の残っている所。
 結婚をして新居を構える際の条件としてはこの二つは譲れなかった。あちこちの土地を訪ねる内に自然と足は大和市に向き、最初はマンションを借り、自分の答えが間違い無いことを認識したのでマイホームを大和市にて購入した。車で出れば幹線道路も近い上に渋谷まで一時間。そして自然も色濃く残っている土地。子育てと仕事を両立させる中、私は自然と大和市の魅力に惹かれて行った。
「みき。川に散歩に行こうか」
「うん」
 自宅そばには境川と言う東京都町田市の草戸山を水源に東京都・神奈川県を横断し、相模湖まで五十二キロの水源を運ぶ川がある。とりわけ私はこの川の魅力に取りつかれ、週に二度は健康維持、リフレッシュを含め子供達を連れ散歩に出るようになった。以前読んだ本によると、川辺はマイナスイオンが多く滞留しており、散歩には最も良いと言う。
 境川の両面を柵に囲まれているので人が水辺に降りる事は出来ないのだが、その分水鳥達にとっては安全な生活圏が築かれており、エサを持って歩かなくても目に鮮やかな鳥達を目近に見る事が出来たのだ。
「あ、あれ可愛い!」
「あれは何の鳥だろうね。家に戻ったら調べてみましょうね」
 動物園に行かなくても動物達を身近に見る事が出きる。しかも自動車の進入が一切禁止されたサイクリングロードが整備されているので、たとえヨチヨチ歩きの子供連れでもノンビリ散歩を楽しむ事が出きるのだ。
 私の目を一番に引いたのは愛想の良いカルガモでも、貪欲に魚を食べ散らかし今や公害とも言われる川鵜でも無い。おそらくは体長十七センチ、雀よりも少し大きい「カワセミ」と言う小さな鳥である。
 川をホバーリングし、止まり木にちょこんととまっては生きた魚を食べる姿は何とも愛らしく、後日カワセミは「川の宝石」とも「シグナルバード」とも呼ばれる人を惹きつけてやまない鳥だと知る。実にこの鳥を追いかけ県外から境川に通い、大型の一眼レフカメラを振りかざし一日中写真を撮る人達も存在するのだ。
 カワセミは羽の色青く澄み、腹は熟れた柿のような毛色をしている。生きた魚しか食べず人に懐く事は無い。こうして人家の側で誇り高きカワセミを見る事ができるのは人が鳥や鯉に上げる為にパンや餌を投げた事により、人家近辺での小魚が増えカワセミの餌場として最適な環境になった事も上げられるし、二〇〇二年頃上流行われた河川の大工事が終了し、境川が綺麗になって来た事もあると聞く。
「あ、あっちにも鳥が居る! ママ見に行こうよ」
 川は何時来ても静かに流れ、生命を育んでいる。子供にとっては家に閉じ篭りテレビゲームで遊ぶよりも外に出て自然に触れた方が、心の成長には役立つと思う。
 自然を求め県外へ出る事も勿論楽しいと思うが、是非一度境川のサイクリングコースに足を運び、カワセミ君の顔を覗いてみて欲しいと思う。ああ、こんなにも身近に自然が溢れている。川のせせらぎを聞き入っているとそれだけで日々癒されるような気持になるのは間違い無いと思う。
「ママ、今日はグランべりーまでじゃなくてもっと先まで行って見ようよ」
「そうね。自転車に乗れるようになったら行って見ようか。川の先には頬っぺたが落ちるほど美味しいアイスクリーム屋さんがあるらしいよ!」

[完]