アトピー「とらえどころの無い病気」

 娘は三歳でアトピーを発症。息子は三ヶ月でアトピーを発症した。
 今だと惑う部分はあるが、悪質なアトピービジネスの餌食にならぬよう、今回は最新アトピー研究結果について色々と学習する機会があったので、一部ご紹介したいと思う。

「親にアレルギーがあると、子供はアレルギーになりやすい」

 良く言われる言葉であり、私自身アレルギー体質である旦那を何度なじったか知れない。統計データによると、現在一人の子供がアレルギーの病気になる確率は二割ほどであるが、両親共にアレルギーがある場合は六十パーセント、片方だけアレルギーがある場合は五十パーセントの確率でアレルギーを発症する可能性があるのだという。

「ほら、やっぱりあんたが原因じゃない……」

 例え旦那が原因の一つであったとしても、それは決して決定打では無い。無論他に原因があるのである。生後三ヶ月で息子は食物アレルギーからアトピーになった。まだ血液検査が出来ない為、検査方法は抗体を針で入れ反応を見た結果卵に強烈なアレルギー反応と小麦に微弱なアレルギー反応が見られた。結果母子共に食物制限が出たのだが、現在は食物アレルギーを押さえる薬を定期的に飲む事により、卵以外は何とか食べられるようになった。

「俺だけが原因の訳無いだろう!」

 食物アレルギーを発生した場合どうなるのか、赤ちゃんはまだ日本語が話せ無いので具体的に症状を聞く事は出来ないが、一般的な症状としては「頭痛」「イライラ」「眠気」が発生し、「唇の腫れ」「ジンマシン」「湿疹」を発生させる。そして悪化すれば「腹痛」「下痢」「嘔吐」を繰り返すと言われている。更に最悪の事態としては「アナフィラキーショック」と言う全身でアレルギー反応が起こり、血液低下や呼吸困難など命に関わる症状を起こす事もある。

 食物アレルギーを起こさせない為には色々な食材を使い、同じ者を食べ過ぎない事。インスタント食品や加工食品などを極力避ける事が上げらる。食物アレルギーと診断された赤ちゃんの内三歳までに三人中二人が、十二歳までに十人中九人が良くなってしまうという統計データがある。親が慌てなくても赤ちゃんの身体が強くなれば、直ってくる病気なのです。慌てず急がず。先生を信じて治療を進めることが一番肝心であるようだ。

 食物アレルギーを起こし易い素材については現時点では以下のような事が分かっている。これらを子供に与える時は注意が必要である。

 0−1歳では卵、牛乳、小麦の三種類
 3−5歳 卵、牛乳、小麦、ソバ、ピーナッツ、魚、エビ
 6−19歳 牛乳卵の比率は減りエビ、ソバ、魚、ピーナッツ、桃、ナッツ類の割合が増える
 成人は小麦、エビ、魚、卵

 しかし勝手に食物除去を続けると「著明な低蛋白症」となる可能性もあるので、定期的な負荷試験や血液検査が必要である。赤ちゃんは生まれた時点では抗体が無い。抗体は母親から貰う物では無く、赤ちゃんが自力で作成する物である。卵を摂取した母親からは卵入りの母乳が分泌され、これがその後アトピーの原因となる事もままあるのだ。母乳栄養だからアレルギーは起きない。と言う事は無い。一例でしか無いが、実際我が家は母乳であったがしっかりアトピーは発症した。

 アトピー性皮膚炎は乳児の場合、二ヶ月以上継続して発生する。痒みを伴う発疹であるが、アトピーと思って受診した人間の約三割は不十分な汚れやタダレによる乳児発疹である事が多いそうだから即断即決・勝手自己判断は絶対にいけない。最終的な相談、判断は医者にしてもらう事が必須である。

 汚れを拭き取るのにはオリーブオイルが最適である。病院で言えば処方してくれるので医療用のオリーブオイルをコットンに取って痒い部分を拭き取り、皮膚についている雑菌を拭き取ろう。我が家の場合は何度皮膚を麻酔なしでメスで剥ぎ、検査をして貰っても雑菌を発見する事はできなかった。

 物事を処理するには「原因」を知ることが一番である。「食物アレルギー」由来なのか、「不十分な汚れ」によるものなのか。はたまた「ダニ」なのか。現在は検査方法が進み、切り分けをする事ができるようになっている。

 アトピーにかかった四人に一人が喘息になり、喘息の子供の二人に一人はアトピーがあるか、以前になった事があるという。当り前の事だけれど、早め早めの処置がアレルギーマーチを防ぐ事はいうまでも無い。

 元々「アトピー」とはギリシャ語で「奇妙な」「とらえどころのない」と言う意味です。アトピーの本質的な原因や皮膚の症状とアレルギーの関係などは実は完全には分かっていません。ただ言えるのは原因対策をして、薬をきちんと使い、皮膚を綺麗にし、先生を信じていれば、何とかなってしまう病気でもあるのでは無いだろうか。

「何故アトピーが起こるのかねえ。昔はそんな病気無かったのに」

 生活環境の変化が一番であると言う人も居るが、やはり食物連鎖の頂点に立つ人間が身体中に一番毒素を溜めて居る事は間違いも無く、アレルギーになり易い体質以前に、そうした頂点の頂点に立つ赤ちゃんがアレルギーを発症しやすいのは、もう仕方の無い事では無いかと今は思っている。

 街中、綺麗な肌の赤ちゃんを見る度に悔しい思いをした事がある。

 何で私ばかりこんなに手をベタベタにして毎日頑張らなければならないのか、自問自答した事も少なく無い。寒い冬の日。暴れまわる赤ちゃんにお風呂上りに二種類も三種類も、部位によって薬を塗り分けなければならない。慣れていない母親だったら本当に笑い話のように聞くだろうけれど、本当に洒落では無いのだ。顔一つとっても目の部分、頬の部分、首筋の部分。全て塗る薬の種類は違うのだ。

「特に顔は吸収の具合が違うのでね……きちんと分けてあげないとステロイド焼けをおこしてしまうのよ……」

 早く良くなって欲しい。一日でも早く。

 そう思って居る人は今の日本に何人居るだろう。医学は日々進歩している数年後にはもしかしたらアトピーの特効薬さえも開発されているのかもしれない。それは夢の話としても、それでも現在かなり病気の原因が解明されつつある事は知っておくべきだと思う。噂に商売に他人の言う事に惑わされないで。赤ちゃんを守り病気を最後まで撃退するのは母親の二つの手を置いて他には無いのだから。

参考
子供のぜん息&アレルギーシリーズ 福井大学医学部小児科教授 眞弓 光文
アレルギーを考える母の会 園部まり子