日本崩壊のきっかけは、消費税値上げだった?

 フィールドの貴公子、デビッド・ベッカム選手が先日、来日した。

 甘いマスクに抜群の技術力。ベッカムに魅せられるファンは後を絶たないだろう。しかし今回の来日前まではベッカムよりも、ドイツのゴールキーパー・カーンの方が好きであった。ごつい顔に卓越した技術力。ワールドカップにおいてドイツが負けた際、カーンがずるずるとゴールポストに倒れこむ姿に、日本人の男性諸氏は「兄いご苦労様! 良くやったよあんたは!」と痺れたのでは無いだろうか。

 顔が良い男は嘘つきに見えてしまう。
 人を疑って見過ぎかもしれないが、少なくとも私はそう思っていた。今回の来日を日本のマスコミは挙って報道し、ニュース番組でも大々的に紹介された。普段そうした情報に触れない人でも「ベッカム」と言う人間について触れる機会になったのでは無いかと思う。バラエティー番組の出演に小学校でのサッカー指導。サッカー選手であるのにも関わらず、スケジュールはかなり過密であったと推察される。そうした中私がふと感じたのはベッカムは見かけに寄らず? 結構良い人なのではないだろうか。と言う事であった。

 芸人がゲラゲラふざけていても、ため息をついたり馬鹿にしたりは決してせず、常に笑顔で対応し、小学生相手でも決して手を抜かず研鑚するその姿に、私は少なからずも感動してしまった。ベッカムはあれ程までに顔が良すぎない方が幸せだったのではないだろうか。もうあと三十パーセント位醜男であってもビクトリア夫人は結婚したであろうし、周りの人間が騒がない分幸せに生きられたのではないか。有名人である事を鼻にかけず、正に英国紳士として陰日なた無く振舞うベッカムに私のみならず参ってしまった日本人は多いのでは無いかと思う。今回のベッカム招致は対広告費用効果を考えても大成功だったのでは無いかと思う。

 暗い日本にもたらされた明るいニュース。
 ベッカム夫妻の来訪は、続く不愉快なt.A.T.u.旋風と違い、気分の良いニュースであった。しかしその裏では「消費税税率増加」案が実しやかに囁かれていた事を何人の人が知っていただろうか。二〇〇四年から値上げを始め、将来的には十六パーセントとも十八パーセントまでにとも噂される。何故こうした税率が出て来るのか。それは

「現在の日本の累積赤字を何とかするにはこれだけの税率が必要であるから」

 と言うのだ。何とも恐ろしい。うっかりベッカムを見て喜んで居る場合では無いのだ。

「消費税。消費税って悪者扱いしますけど、いいんですよ。消費税を十パーセントに上げたって。そうしたら所得税が無くなるんですから。税収は消費税一本・十パーセントだけ、そうすれば税務処理も楽になるし、メリットとしては大きいと思いますよ」

 消費税が五パーセントに上がった際、ある経済評論家がこんな事を言っていた。成る程そう言われてみればその通りで、所得税が無くなるのであればそうした事もアリでは無いかと思ってしまう。しかし考えてみると我が家は住宅を三年程前に購入し、十五年間は所得税を減免される優遇措置を受けている。突如として所得税が無くなり別の所から取られる事になったら丸損になるのでは無いだろうか?

「不況対策としては住宅を買わせる事が一番です。一生涯で一番高い買い物であろうし、百万単位でお金が動きます……」

「今、優遇税制だから買ったほうがいいですよ」と言うのは新築マンションを売る人のみならず不動産関係者であれば口が酸っぱくなる程言った言葉では無いだろうか。今年こそ、この「優遇税制」が終るのか? と思いきや、「上昇してきた景気? を冷やす可能性がある」と延長を求める声も少なく無いと言う。税金面で有利ですよ。と言われ購入を決定した人にとって、「急にそちらの税金は取らないですから……諸事情により関係なくなりました」と言われたら腹が立つだろうし、既に財源としてある物をやめる事はおそらく日本政府の動向から考えるとあり得ないと思う。

 日本の税制が変わる時に良く使われる言葉に「不公平」「他国に比べると……」と言う単語がある。消費税の一番税率が高いのはフランスの二十二パーセントであるが、日常品に関して言えば日本と変わらない五.五パーセントである。最初に大きな数字を聞くと、次に通常よりも少し大きい数字を聞いても然程気にならない。倍上がったと聞くと大分上がったなと思うが、倍より少し少ない。となると「仕方ないのかな」とも思う。現在の消費税値上げについての報道を見ていると、政府の数字マジックの下ごしらえが始まったのでは無いかな、と邪推してしまうのも決して言い過ぎでは無いだろう。

 消費税が上がると仮定すると、悲しむ人が大勢だろうが一部私のように悲しまない人間も存在する。それは年収二千万円以下の個人業者だ。こうした人間は消費税を納める義務が無い為クライアントから請求した分はそのまま自分のポケットに入れる事が出来る。つまり税率が上がるほど増収に繋がるのだ。

「池田さん消費税払ってないですよね。だから請求書に記載するのはおかしいんじゃないですか?」
「仕入れには五パーセント既に払っているわけですから、税理士さんからも取っていいと指導を受けています」
 
 何と言われようとしっかり請求するのを忘れない。法律の抜け穴。
 しかし消費税に関しては未納の業者が多いだけでなく、消費者から預かった消費税を使って運用を行い失敗した例さえ珍しくは無い。現在五パーセントでもこの有様なのだ。突如として十パーセント以上に上がったら……目先の小銭に問題点が続出する事は間違い無いだろう。

 例えば家計の中で、私が突然「スーツを買うから」とお金を使った場合大トラブルとなり、まず予算が通る事は無いだろう。しかし国の場合この「スーツ」が公共事業となり、使ってしまった事を後で悪びれる節も無く「お金が無いから」と公然と増税できる事が消費税増税論が加熱する所以であろう。お金を集める所と使う所が違うので、大切にしようという意思が少ないのでは無いか、既に予算組みの段階でお金を五十五パーセントしか持っていないのにも関わらず平然と国会を通過するのは既に社会一般常識からは逸脱している事に、何故政府高官は気がつかないのだろうか。

「消費税は初めは嫌いでしたけど、実際は良い税制でした」
「消費税のお陰で日本は倒産する事無く、不況を脱出する事ができました」
 
 私があのベッカムを来日時と同じような感想を、消費税に対して持つ日が来るのだろうか? 結局は不況なのに毎年これでもか、と取れる所から増税・増税。今年は発泡酒と煙草が値上がりし、健康保険がコッソリと総報酬制になった。来年は本当に「消費税」が上がるのかもしれない。そうすると建設ラッシュが続くマンションや建売住宅など高額商品はまず売れなくなるだろう。消費税が上がる事により日本国内の消費は更に冷え込み、デフレが更に進行。「日本崩壊のきっかけは消費税増税だった」とならぬよう、心から祈りたい。無論私は不況の最中で、借金穴埋め理由での増税には大反対である。